Show the BLACK 公演情報 大川興業「Show the BLACK」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    笑いに包んだ毒薬
    暗闇の演劇ということで、天井桟敷の『盲人書簡』のような、劇構造を解体したり、見るという行為そのものを相対化するような実験演劇かと思ったが、そういうものではなかった。だが、その方法は充分に実験的。

    大川工業ということで、はっちゃけたものを想像していたが、
    芝居自体は正攻法の芝居。
    笑いの要素は当然多いが、おふざけで笑わせているというのとは違う。
    計算された脚本と演技力で笑わせている。
    しかも、その笑いのオブラートの中には、社会風刺の毒薬が仕込まれている。見事。

    そのような芝居を暗闇でやるとどうなるか、、、
    単に普通の芝居を暗闇でやりましたという訳でもない。
    そこには暗闇でやることの意味はきちんと考えられている。

    ネタバレBOX

    冒頭、見ず知らずの複数人が暗闇に閉じ込められる。
    どうしてよいかわからなくなるが、見えない敵の仕業だろうということになり、戦うためにはここにいる者で団結してその敵と戦わなくてはならないとなる。その為にはリーダーが必要だということで、リーダー決めを始める。

    このように、話が展開する中で、機知に富んだ絶妙な社会風刺が連発する。
    それも権力を嘲笑して笑いをとっているが、その笑いをとっている本人も差別的な発言(失言)が多かったりと、一筋縄ではいかない毒の込めようがなんとも素晴らしい。

    ただ笑わせているだけと思いきや、集団を組織するという問題が、政治の問題と絡んで語られ、更にそれが闇の中でのことであることを踏まえると、この集団が、国家という集団の寓意のようにも見え、いつまで続くかわからない闇の中で、私たち一般市民は「何を見て、何を見ていないのか」ということを暗に問われているとも受け取れる。

    また、その後、リーダーとなった(大川総裁演じる)佐藤を中心に物語は進むが、そこでも、極限状況に置かれた人間の狂気のことや、人間関係の不信の問題なども描かれる。佐藤は会社を経営していたが、かつて社員にひどい仕打ちをされて裏切られたことがあり、そのことが元で、この状況でも疑心暗鬼になったりする。

    更に、佐藤は、会社で経営不振の鬱憤を社員にぶつけていたら、その社員は更に下っ端の社員にその不満をぶつけるという暴力が弱い方に流れる話など、現代社会の闇はこの作品の闇の中に常に投影されている。

    このように書くと、深刻な舞台のように感じるかもしれないが、深読みすればそうも読み取れるというだけで、表面的には軽い笑い話の中でこのような内容がサラッと語られている。そのスマートさには本当に驚いた。

    笑いでオブラートに包んであるが、その中身は猛毒。

    闇の中でもこの芝居を成立させているのは、第一に大川総裁の存在感(個性)と演技力。そして、その他の役者さんの演技力。

    素晴らしかった。

    ただし、ラストの大オチ(ネタばらし)は、少しわかりづらかった上に、何か強い問いかけを残したかというとそんなこともなく、それまでの芝居が素晴らしかっただけに、ラストの弱さはもったいなかった。

    それでも、充分面白い作品だった。

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    2013/10/14 02:06

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