Show the BLACK 公演情報 Show the BLACK」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-4件 / 4件中
  • 「災害ユートピア」が暗闇に潜んでいる
    暗闇の中、劇場に響き渡るのは、役者の放つ声のみ である。
    姿形が見えぬなら、音響プレイヤーをステージに置き、それを流せばいいのではないか、という人もいるだろう。

    その疑問は的を得ており、たとえば映画館のスクリーンを照らす映写機が故障していた場合、作品の音声だけでもチケット代1800円 支払う観客は皆無である。もし、字幕版『アバター』を音声だけで聴けば、臨場感のある英会話にすぎない。

    だが、このような【?】を頭上に浮かべる紳士淑女は、「暗闇演劇」を一度も観劇しておらず、ネオン街の生活に溺れてしまっていることを察する。
    今すぐ、ネオンの小さな発光体をリサイタル店に出すか、秋葉原で高環境性能のLEDを購入し、付け替えるべきだろう。

    「暗闇演劇」の特徴は、都会から一つの「別空間」として劇場を分離する点にある。これが、世に云う「怪談噺」の雰囲気作り だが、やはり見知らぬ人同志が肩を寄せ合い、「別空間」を共有するのは日常生活を送るなかで そうはない。私は、東日本大震災で海外メディアが「支援物資に並ぶ日本人」を賞賛した記事と結び付けたく思う。
    「災害ユートピア」と呼ばれる、大規模な自然災害後に出現する人と人が共生の精神の下、供に助け合う集団現象の一つの現れ である。震災後、仮設住宅での家庭内暴力などは問題になったものの、「社会動乱」(自然災害含む)を機に内閣へ非常事態権の付与を可能とした改正憲法案を読むと、自然災害を もう一つの顔=「災害ユートピア」のアプローチで考える観察眼も必要ではないか。

    観客(他者)の存在を感じるのは「笑い声」…。あるいは、「笑い声」を発することでしか、自らの存在を示すことはできない。
    おそらく10年目を迎えた「暗闇演劇」のレビュー史のうち、観客の相互関係を紐解いた文書は 他にあり得ないだろう。


    密室で起こるサスペンスだとか、笑いだとか、疑心だとか、団結だとか、そういった糸を辿ってゆく感覚は いつの日かの少年である。
    この演劇を、スポットライトを当てた上で行ったとしても、私は「すぐ消してください」と切望するに違いない。


    ※ネタバレ



    街から灯りを消せば、電力と 煩わしい毎日は排水管の底へ沈む。しかし、一人きりになれ、とは言わない。
    「蝋燭」の周りに、見ず知らずの人々が集まり、供に同じ空間を共有する…。それこそが、中世ヨーロッパの共同体であって、日本の落語文化であって、社会的には「災害ユートピア」へ繋がるのだと思う。
    私たちは劇場を出た時、旅に疲れ癒されたヒッチハッカーである。


    ネタバレBOX

    もちろん、2時間 ずうっと暗闇だったわけではなく、「蝋燭」程度のライトアップにより圧倒的身体美を見せつけられたシーンも あったのだが。
  • 満足度★★★★

    暗闇演劇10周年
    初めての観劇であります
    ほんとーに真っ暗でした、暗所恐怖症の人は無理でしょうねぇ・・・。

    10年で4人の退席者が先の回では混乱したお客さん1名につられて、
    1回に4人になったとか・・・・。

    笑えたり怖かったりと、いろりろ感情を揺さぶられた2時間でした。

  • 満足度★★★★

    10周年も続いてるとは
    まだ開演しないうちは幕があるので、実際舞台がどうなっているのかは見えないまま。

    ネタバレBOX

    セットとかあるのかな?とか思ったけど、見えないんだからセットあってもあんま意味ないな、とか考えたり。劇中の会話は面白かったけどあと30分短くてもいい。と思いました。誰かに閉じ込められたと推測される6人が脱出しようとする話なのですが、最後の通り魔殺人事件の被害者たちというネタバレがどうも夢オチみたいで微妙でした。この被害者たちという設定をそのままにするならば、皆が「櫓を組んで脱出しようとした」というくだりは無い方が良かったです。櫓を組んで脱出?ということはさっきは明るかったのか?と思ってしまいます。そういうとこがちょっとスッキリしませんでした。中身は面白かったです。あと、できれば、カーテンコールの時はずっと明るくして欲しかったな。
  • 満足度★★★★★

    笑いに包んだ毒薬
    暗闇の演劇ということで、天井桟敷の『盲人書簡』のような、劇構造を解体したり、見るという行為そのものを相対化するような実験演劇かと思ったが、そういうものではなかった。だが、その方法は充分に実験的。

    大川工業ということで、はっちゃけたものを想像していたが、
    芝居自体は正攻法の芝居。
    笑いの要素は当然多いが、おふざけで笑わせているというのとは違う。
    計算された脚本と演技力で笑わせている。
    しかも、その笑いのオブラートの中には、社会風刺の毒薬が仕込まれている。見事。

    そのような芝居を暗闇でやるとどうなるか、、、
    単に普通の芝居を暗闇でやりましたという訳でもない。
    そこには暗闇でやることの意味はきちんと考えられている。

    ネタバレBOX

    冒頭、見ず知らずの複数人が暗闇に閉じ込められる。
    どうしてよいかわからなくなるが、見えない敵の仕業だろうということになり、戦うためにはここにいる者で団結してその敵と戦わなくてはならないとなる。その為にはリーダーが必要だということで、リーダー決めを始める。

    このように、話が展開する中で、機知に富んだ絶妙な社会風刺が連発する。
    それも権力を嘲笑して笑いをとっているが、その笑いをとっている本人も差別的な発言(失言)が多かったりと、一筋縄ではいかない毒の込めようがなんとも素晴らしい。

    ただ笑わせているだけと思いきや、集団を組織するという問題が、政治の問題と絡んで語られ、更にそれが闇の中でのことであることを踏まえると、この集団が、国家という集団の寓意のようにも見え、いつまで続くかわからない闇の中で、私たち一般市民は「何を見て、何を見ていないのか」ということを暗に問われているとも受け取れる。

    また、その後、リーダーとなった(大川総裁演じる)佐藤を中心に物語は進むが、そこでも、極限状況に置かれた人間の狂気のことや、人間関係の不信の問題なども描かれる。佐藤は会社を経営していたが、かつて社員にひどい仕打ちをされて裏切られたことがあり、そのことが元で、この状況でも疑心暗鬼になったりする。

    更に、佐藤は、会社で経営不振の鬱憤を社員にぶつけていたら、その社員は更に下っ端の社員にその不満をぶつけるという暴力が弱い方に流れる話など、現代社会の闇はこの作品の闇の中に常に投影されている。

    このように書くと、深刻な舞台のように感じるかもしれないが、深読みすればそうも読み取れるというだけで、表面的には軽い笑い話の中でこのような内容がサラッと語られている。そのスマートさには本当に驚いた。

    笑いでオブラートに包んであるが、その中身は猛毒。

    闇の中でもこの芝居を成立させているのは、第一に大川総裁の存在感(個性)と演技力。そして、その他の役者さんの演技力。

    素晴らしかった。

    ただし、ラストの大オチ(ネタばらし)は、少しわかりづらかった上に、何か強い問いかけを残したかというとそんなこともなく、それまでの芝居が素晴らしかっただけに、ラストの弱さはもったいなかった。

    それでも、充分面白い作品だった。

このページのQRコードです。

拡大