ゆるやかな「変貌」に引き込まれた
笑いが 「零れ落ちる」、まさに そのような表現こそ相応しい。
劇作家•つかこうへい氏の代表作『熱海殺人事件』を、2013年の最新ワードや昭和の歌謡曲を扱い、新たな作品として変貌させた。
劇作家に対する、これほどのオマージュもないだろう。
幕開け、キャスト紹介の後、「つかこうへいリスペクト!」と、プロレスのマイク•パフォーマンスを彷彿させる口調で語った そのコトバは本物であった。
キャスト紹介前の約15分間にわたって繰り広げられる冒頭のシーンは、部長刑事•木村伝兵衛(宮川浩明)の人物像を 探るには十分な時間だったと思う。
過去、上演され続けた『熱海殺人事件』において、木村伝兵衛は異常者として描かれるケースが占めるが、本作も「常道」を選んだらしい。
私は「新たな作品として変貌させた」旨を述べた。
そして、「変貌」というのは作品全体の話だけではなく、最新ワードー昭和歌謡曲の「変貌」であり、コメディーシリアスの「変貌」を指す。
違和感を生じさせない。
ある程度、観客も把握できるほどの「変貌」ではある。
ゆるやかな起点を示し、観客を引き込んでしまう構成は、圧倒的な「調整力」に他ならない。