風 -ふう- 公演情報 劇団ZAPPA「風 -ふう-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    バランスよし
     嵐版を拝見。新撰組の中で最も人気の高い沖田 総司。未だにその墓前には若い女性の手向ける花が絶えないことでも有名だが、その沖田をサヴァン症候群のクランケとして描いた特徴ある新撰組物語である。因みにサヴァン症候群とは、特定の分野で頗る優れた才能を示す人物が、他の知的分野で障害を負っている場合を指す。映画「レインマン」のモデルもそうであったし、今作では、沖田とよもぎがそうである。

    ネタバレBOX

     ZAPPAの劇団としての優しさが、この登場人物達の描き方に現れているように思う。メインプロットで唯一の障害者である沖田を一人にしておかない配慮である。即ち、沖田の相方としてサブプロットで同じ症状を持つよもぎが登場することによって、沖田もよもぎも共に独り孤立しないで済むように配慮されていると見た。而も、年の近い若い男女として描かれている点に、この劇団の温かさを感じたのだ。
     総じて、幕末当時の関東の田舎者という新撰組中枢部の純朴と意地を、歴史的評価は兎も角、落ち目とはいえ未だ、権力・権威の象徴的総体では在り得た幕府の旧主派の差別意識に対抗する健全な精神として夢見ている点は、特徴的である。近藤 勇役の北崎 秀和の容貌も何処となく近藤本人に似たイメージのキャスティングだ。近藤は、宴会芸で拳をあんぐり開けた口の中に入れることができたと言われる。
     隋所に、近藤、土方、山南、沖田他、新撰組各隊隊長たちの微笑ましい人間関係を描き、派閥の異なる芹沢派を隊内の異論派・敵と見立て、勤王派を外部の敵として粛清するが、これに同郷出身のあさぎ、あかね、よもぎ姉妹を絡めて世話物的な広がりを持たせている辺りエンターテインメントとしてのバランスも良い。基本的に温かいシナリオだけに、歴史の歯車が否応なく回り、弱者を踏み潰して行く様が哀れである。(追記2013.10.7)

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    2013/10/04 09:22

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