WATERS 公演情報 実験劇場企画公演「WATERS」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    未完成の可能性
    学生劇団の評価は難しい。他の小劇場の劇団と同じように評価しようとすると、その中に潜む大きな可能性を切り捨ててしまいかねない。

    今作も、技術力や完成度を問題にしたら、手放しでは評価できないが、未完成の中に潜む大きな可能性を強く感じた。

    ネタバレBOX

    ミドル英二さんも指摘する通り、実験劇場の芝居は「目指している地点がグッと高い」と私も思う。そこがとても魅力的である。
    その「目指している地点」も作・演出家によって様々であり一枚岩ではないという印象がある。
    中でも今作が目指している地点は、商業演劇に行っても通用するような壮大な作品スケール。であると同時に、小劇場でしかなし得ないような特異な演出も試みられている。

    ギリシャ神話を模した神々が登場し、神と地上の民の問題が提起される。地上は水不足であえいでいる。そのために、神が地上に水を産み落とす。その水が主人公の〈オタ〉と〈しずく〉、、、、(←で合っているか不安です。違っていたら指摘してください。)
    その水は、穢れをしらない清き水。その清き水が洪水により濁流にのまれ、〈オタ〉と〈しずく〉は離れ離れになる。〈オタ〉は時間をかけて旅をし、世の中のことを徐々に知っていく。〈しずく〉は、世間の荒波にもまれ、身を売ることでしか生きる術を得られなくなってしまう。そして、心も荒んでいる。その二人が偶然に再会し、約束の地、海を目指す。

    というような話。
    濁流にのまれるということには、3月11日の震災のこと、並びに自然一般の脅威と共に、社会の荒波にもまれるという問題が重ねられている。
    穢れるというようなテーマにも、原発事故によって放射性物質に汚染されることと、社会に出てその純粋さを保つことが可能かというような問題が重ねられている。

    壮大なスケールとそこに込められた問題意識は、かなり高い意識で作品が作られていることを示している。

    ただ、壮大なスケールにしたが故に、学生劇団の弱さも目立ってしまっていたと思う。スケールが大きくなれば、そこに立つ役者の演技力もどうしても問われてしまう。学生劇団にこれを問うのは筋違いかもしれないが、はやりそこに目は行ってしまった。ただし、壮大ではない部分での演出は、むしろ学生でしかできないエネルギーを発散していた。自分たちの若さを体ごとぶつけるようなエロティックな演出は強烈だった。(目のやり場に困った。)

    ただし、この二つ(物語の壮大なスケールと肉体自体を提示すること)が、有機的に混じり合っていなかったように思う。これがうまく混じり合っていれば、演技の弱さなどには目が行かなかったはずだ。
    それでも、ラストシーンでは見事にこの二つの強度が合致していたと思う。ラストは素晴らしかった。

    また、色々盛り込もうとしすぎて、中盤のテンポがゆるくなり、少し長く感じた。
    緩急がつけば、より素晴らしい舞台になったのではないか。


    実験劇場関係の芝居は、『コスモノート』以来、かなりの作品を観ているので、AKBのファンのような感覚と言おうか、以前の芝居でも見たことのある出演者などの成長を応援しながら舞台を見る感覚が湧いてしまった。
    それが良いことなのか、自分ではわからないが、上手くなっている役者さんなどを見ると、妙に嬉しくなった。

    特に、串尾一輝さんはどんどんよくなってきている感じがした。
    また、岡田萌笑子さんも今回も独特な空気感を持っていてよかった。
    山田岳志さんも3枚目の独特のキャラを確立しつつあると感じた。
    舞台美術の朝長愛さんも、芝居を活かす舞台美術でよかった。

    当日パンフもよかった。
    他の皆さまも素晴らしかった。今後の活動にも期待しています。

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    2013/09/28 11:49

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