『起て、飢えたる者よ』ご来場ありがとうございました! 公演情報 劇団チョコレートケーキ「『起て、飢えたる者よ』ご来場ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    劇団チョコレートケーキの【起て、飢えたる者よ】を観劇。

    前作ではナチ収容所での生き残りの人達を描いていたが、今作では世間を騒がした連合赤軍の浅間山荘事件の山荘内部での出来事を描いている。その中で何が行われていたのか?一般で知られている史実に基づく実録ものとして描くのか?観賞前の興味深い点であった。

    山荘に立てこもった革命家5人と人質に取られている山荘経営者の妻を含めて6人で物語は展開していく。革命家たちは国家の攻撃に備えて準備をしていくのだが、そんな最中でも自己批判を繰り返している。
    そして人質の女性はあくまでも食事係として扱っているのだが、革命家たちは女性をオルグしようと提案する。そしてオルグされてしまった女性に自己批判しろと革命家たちは迫るのだが、彼女はそんな事に興味すら示さず、まるで可笑しな集団?と見ているようでもある。
    しかしそんな緊張した状態が続いているからか、女性も過去の身近な事柄から自己批判を始めていくのである。
    そして回数を重ねるうちに、女性も同士の一員になっていってしまう。
    そして未だに国家の攻撃がないながらも緊迫した日々が過ぎ、革命家たちの決意と意識に少しづつ綻びが見え始めていく。だがそれとは反対に女性の革命に対する熱が帯びていき、少しづつあの永田洋子に変貌していくのである・・・。

    今作の面白い点は、女性の変貌を通してあの当時の出来事を再現している点だ。最初は批判的に革命家たちを見ていた女性の視点というのが、あの当時のノンポリの視点でもあり、今だからやっと見えてくる時代の批判性でもある。そして女性が少しづつ革命家の考え方や国家の在り方を分かって行くと共に、観客も同時進行で理解していくのである。毎作ながらその世界観にゆっくりと誘導していく演出方法は見事の他、この上ない。
    そして観客は聞きなれない言葉(オルグ、総括援助、殲滅戦、異議なし)を聞きながらも、女性がリーダーと変貌していく姿を目の当たりにした瞬間から、観客は座席から逃れられない状態、観客が同士になってしまったと錯覚してしまった状態、そして何故あのような事を起こしてしまったのか?という様々が疑問を観客自身が知らず知らずの内に自身の内面に問いかけ始めた瞬間から、劇的要素が一気に加速するのである。その加速に乗っかった観客のみが演劇という芸術にオルグされてしまい、国家すなわち演劇の世界に没入してしまうのである。

    見事な傑作である。

    注釈 オルグ・・・自らの組織拡大のために、一般人を勧誘して構成員にすることを指す。

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    2013/09/24 11:53

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