SUMMER PARADE 公演情報 AnK「SUMMER PARADE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    中途半端に語ることの洗練
    仕組みがしっかりと作られて、そこに語られる物語に完成度と洗練された中途半端さがあり、だからこそ伝わってくるもの、そして強く惹かれるものがありました。

    ネタバレBOX

    3面囲みの舞台で、決して広くはない、むしろタイトな空間。
    三つの寝袋が並べられると結構舞台は満ちて。
    そのなかで、真ん中のひとりを現実側につないで
    アンドロイドの少年と少女が少しずつ心を解いていく。

    その媒体となるホログラムの
    素敵ないい加減さとリアリティのバランスが凄く良くて、
    たとえば少女がノートに書き綴った世界も
    無理なく、不要な禍々しさもなく、舞台に引きだされていく。
    スプーンをこめかみに当てて、現われる態のロールたちの
    いろんな遊び心が舞台にあって、その内容が舞台から少女の表層の鎧を外し、少しずつ秘密でノートにつづられた想いのありのままの姿となり、最初は躊躇しつつも、でも次第に扉を開くことへの不器用な意思が解かれて女性の内心を晒していきます。

    その、脳内を映すホログラムたちが描くエピソードが、個々に完結せずどこかはみ出していて、中途半端で、薄っぺらく、どこかご都合主義であることで少女の想いの不規則な揺らぎがとてもビビッドに伝わってくる。
    しかも、舞台の中にずっと現実の中に眠っているロールの存在があることで、ホログラムの世界に少女の抱くものが現実の鎖をすべて外してしまうことなく、それ故にさらにその世界を裏打ちする想いも、単に染み出すのではなく、次第に現実と対比した座標を持って伝わってくる。

    役者たちのお芝居もとても良く切れていて、
    想いをイメージする演技にも、その想いを具象するホログラムの演技にも
    シーンをひとくくりにせず、少女とアンドロイドが感じる自らの想いを晒した時の反応の既視感や、そこに収まらないことへの戸惑いや、期待までも含めた
    想いの色のまでを編み上げる力があって。

    星をめぐる顛末にしても、アンドロイドの独白にしても、それらを紡ぎあげるホログラムの首にメーカーの名前が刻まれていることなど様々な遊び心も旨いなぁと思う。

    描かれるものの色は、どこか淡々としていて薄っぺらい質感もあるのですが、その色を崩すことなく、一つずつの物語のかけらから、少女とやがてはアンドロイドの想いの断片が紐解かれ重なっていく語り口には。作り手のセンスの際立った洗練を感じる。

    なにか、全く力むことなく舞台の事象を追い続け、気が付けばどっぷりと作り手の世界にはまってしまっておりました。

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    2013/09/23 01:53

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