『起て、飢えたる者よ』ご来場ありがとうございました! 公演情報 劇団チョコレートケーキ「『起て、飢えたる者よ』ご来場ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    悪霊はわたしたちの中にいる
    この時代のしかもこの題材を直接的に取り上げることは、まだ我々の世代においては逡巡するところがあると思うが、この若き劇団はそれを真っ向から挑んだ。そして演劇というアイテムを使って人間の謎にせまるドラマを形作った。その取り組みは、社会的な存在意義をもたない趣味的小劇場劇団が大多数の中では注目すべき成果であると思う。

    ネタバレBOX

    はじめは史実の通り、追い詰められた革命戦士たちが山荘に逃げ込み、管理人夫人を人質にとって籠城する。しかし、その先は史実と違って警官隊も現れず空回りの空白の時間が過ぎていく。その中で管理人夫人を革命戦士にオルグしようという意見が出る。そして、意外にもオルグは成功して管理人夫人は単なる人質ではなく同志になる。やがて彼女は同志に留まらず、かつて山岳アジトで総括という名の凄惨な虐殺を繰り返した指導者の幻影としてよみがえる。このフィクションは強引にも思えるが、ごく普通の人々が残虐な行為の当事者になっていくのだということを現しているのだろう。管理人夫人を演じる渋谷はるかは大人しい一般女性から狂信的な指導者へメタモルフォーゼする。男優陣の演技も充分説得力を持っている。16人の同志殺しの行為者たちもはじめはわれわれと同じような普通の人たちで世の中を良くしようと思い行動して、結果的には歴史の闇の悪霊になってしまったのだという人間の不条理性をこの芝居はリアルに表現している。

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    2013/09/22 22:15

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