期待度♪♪♪♪♪
地獄が原点
言うまでも無く、地獄とは、現に我々が生きているこの日常を言う。我々は、自らが生き延びる為に、他の総てを、食える物なら食い殺して生きているのだ。このことに痛みを負うような精神にとって、生きることは、即ち地獄である。この事実を知って苛まれ乍ら尚生き延びる時、我ら総ては地獄を生きるのだ。従って本質を誤魔化さぬ優れた作品、ユニークな作品の原点は地獄である。カミユの「転落」が、オランダのアムステルダムを神曲の地獄に見立て、地獄降りをしているという解釈は広く知られているし、現代アメリカで最も興味深い作家・詩人、P.オースターの「最後の物たちの国で」、A.クリストフの諸作品、ドストエフスキーの「地下生活者の手記」「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」、ロートレ・アモンの「マルドロールのうた」等々。総て地獄抜きでは考えられない作品群である。
だから、アーティストたる者の才能とは、紛れも無く、不幸の代償なのである。自分は、たくさんのアーティストを友人に持つが、才能のある連中の誰一人として幸福ではない。アーティストにそんな物は余計である。
だが、このフライヤーはそんなことも、あっけらかんと笑っているな。メキシコの骸骨みたいに。ドライに笑う骸骨の笑い声はどんなものだろうか? ケタケタ、カラカラ、古くなるとサラサラ、シャーシャーか? 様々な年代の骸骨のコーラスなんてのも面白そうだ。悪乗りではない。ドライなだけだ。