満足度★★★
平行線
シンプルなセットと滑らかに変化する照明の中、台詞やシーンが順番を入れ替えながら淡々と繰り返され、ある種の退屈感を覚えつつも引き込まれる不思議な雰囲気を持った作品でした。
「インタビュー資格制度」が制定されている渋谷区内の架空の町、汝滑町(うぬぬめまち)に住む女の話と大島渚監督の『夏の妹』と各役者のインタビューの返答が断片的に現れる構成で、物語性が感じられず掴み所がありませんでした。
沖縄の米軍基地や3.11、原発といった現在進行中の政治/社会的なトピックが淡々とした展開に現実的な引っ掛かりを与えていたのが印象的でした。
舞台奥のドアから手前に伸び、ステージから跳ね出した白い通路が5本並列に並び、それぞれに椅子が1脚置かれていて、各通路に1人ずついる5人の役者は椅子に登って跨ぎながら前後運動を繰り返し、時にはヨガマットを敷いてヨガのポーズを取ったりしていました。
台詞と動きが関連していなくて、役者間の関わり合いもほとんど無く、『夏の妹』についての「良く分からない」というコメントが、そのままこの舞台についての自己言及的なコメントになっていたのがユーモラスでした。
派手さは無いものの刻一刻と変化する照明がとても美しく、特に最後の消え入り方が印象に残りました。