『泡』(再演) 公演情報 劇団 東京フェスティバル「『泡』(再演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    もう少しエッジを立てても?
     小名浜は、嘗て遊郭のあった地域である。風営法改正で、他の遊郭地域同様、ソープが多く建った。所謂浜通りにあるが、漁港でもある。今作では、3.11、3.12以降にここで働くソープ嬢、経営者、従業員と客の日常を描くことでドラマとしているが、やや、地元の人々のメンタリティーに配慮し過ぎた感もある。(追記2013.9.19)

    ネタバレBOX

     3.11、3.12によって福島県をはじめとする被災地は大きく変わった。殊に、事故のあった原発を抱えた福島県には、事故後の原発労働者、仮設住宅建設で雇われた工事関係者などが集まり事故バブルとでも言うべきミニバブルが起こっていたのも事実である。無論、地震・津波とそれに続くF1事故の影響で沿岸漁業及びそれに携わる漁民の受けた影響は大変なものである。垂れ流された汚染水の悪影響と、国、東電、推進派御用学者らの嘘、情報隠蔽とマスメディアの情報操作。アメリカの思惑などが絡まって、事態は悪化の一途を辿った。事故直後は情報インフラそのものが大きな被害を受けた結果、一番、正確な情報を必要としている人々が、最も情報を持っていない、などという事態も起こっている。このことが、事態を益々悪いものしたことは否めまい。
     情報が回復するにつれて、大学関係者などは、いち早く独自のネットワークを用いて情報収集に努め、或る程度の成功を見ているが、一般の人々は、TV、ラジオ、地域の新聞などが、主な情報源であった。ラジオ、新聞を除けば、まともな情報は余り入って居なかったと考えた方が良かろう。メディアリテラシーそのものが、この「国」で浸透していない。従って、肝心な情報は遮断される一方、政府、東電に都合の良い情報だけが、イエロージャーナリズムと同様の手法で撒き散らされた。正確な情報を得ていた、知識人の多くは、早い段階で土地を離れている。無論、知識人のこのような態度に倫理的な問題は残るものの、一般の人々の為に自身のできる最大の事をした人々も居た。
     然し乍ら、メルトダウン、メルトスルーをしたことが素人の目にも察せられる時期になって尚、政府、東電、御用学者、NHKなどは、事故の真相を隠し続け、嘘を垂れ流していたのであり、現在に迄、それは続いている。
     3.12の爆発以降、数百種類の放射性核種が放出され、約1週間後には、福島由来のプルトニウムがアメリカで発見されているにも拘わらず、政府、東電、NHK、御用学者は、シラを切り、嘘をつき続けていたのだ。ヨウソ剤も有効な使い方をされなかったケースが多いと聞く。それもこれも、嘘ばかりが罷り通り、反対に必要で重要な情報が隠蔽されたからである。この「国」は、国民の事等一切考えていない。それに気付き乍ら、革命を起こせない民衆にも未来は無いが。
     まあ、この作品は、ここ迄、突っ込んで考えても居なければ、これらの事実関係の重大性について問題化しようという姿勢も無い。逆に、それだけ、残った人々に近いと言えるのかも知れない。それだけに、ここで言われる何気ない表現や表象は重いものがあるいう点に注意を喚起しておくことは無駄では無かろう。
     一方、これら深刻な事実を充分知りながら、敢えて残った人々もいる。多くの場合、彼らが、それを必要だと考えたからだが、地元に残って、人々の心のケアに努めたり、問題の核心を地道に訴え続ける人々、果ての見えない収束へ向けて被曝・被爆の危険に身を晒しつつ働く下請け労働者、良心的医師等々の人々についても、次は描いて欲しい。
     欲を言えば、我々、都会に居て、電力の益を受ける側に、必要な情報が集まり、危険に身を晒し、電力を送り続けている人々には、有益な情報が集まり難いという現状をも描いて欲しいものだ。現代に於いては、情報こそ、命である。この故にこそ、安倍は、通常30日は、意見を公募するパブリックコメントを、特定秘密保護法案に関しては僅か15日間で打ち切った。また、以前にも書いた通り、IOC総会で安倍がF1事故汚染水に対する記者質問に応えて「状況はコントロールされている」と述べたとされることについても、「情報はコントロールされている」というのが、正しかろう。

    0

    2013/09/19 15:37

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大