満足度★★★★★
檻としての家
安部公房の不条理劇をダンスを中心に演奏や映像等を盛り込んで構成した作品で、コミカルな表現の中に次第に恐ろしさが増して来る、素晴らしいパフォーマンスでした。
結婚を控えていた男の家に見知らぬ9人家族が押し掛けて来て様々な屁理屈を付けて住み着き、最後には男が死んでしまう物語が台詞も交えて分かり易く描かれていました。原作には登場しない(と自分で言ってしまう)アパートの隣人がアコーディオンを弾きながら歌うのも、台詞をカットした部分を補っていて効果的で、最後には物語の世界に取り込まれてしまうのも良かったです。
開演前から舞台上に置かれている、電球が仕込まれた家のミニチュアが象徴的に用いられていて、作品に奥行きを与えていたと思います。
途中で床に白いテープを貼って家の間取りを作るパフォーマンスが楽しく、終盤にはそのテープを剥がして男を壁に固定するのに用い、「家=檻」と見せていたのが印象的でした。
家族の1日の生活を早回し何度も繰り返すシーンで、初めは傍観していた男が次第に率先して行動する様になる描写が、見た目はコミカルなのに何とも言えない怖さが込み上げて来て、素晴らしかったです。
キレの良い素早いムーヴメントを多用した振付が爽快で、ユニゾンや数グループに分かれて踊る群舞に迫力がありました。3人でコンタクトしながら踊る振付を毎回異なる1人を抜いたペアで見せるシークエンスも面白かったです。
ダンスとしても演劇としても充実した内容なのに、平日の2日間しか公演がないのが勿体なく思いました。