最高傑作 Magnum Opus “post-human dreams” 公演情報 劇団銀石「最高傑作 Magnum Opus “post-human dreams”」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    吠える哲学
    人間とロボットとの違いを問いかけ、そこから始まる主役の交代、
    そのビフォー・アフターを4つのエピソードから成るオムニバスで見せる。
    シリーズで取り組むテーマが時代を反映して魅力的だ。
    饒舌な哲学を叫ぶ台詞量に圧倒されるが、あんまり吠えるとキャラが霞む。
    冒頭のエピソードは、映画によくある”エイリアンはどいつだ?!”状態だが
    もう少しサスペンスフルな展開で惹きつけて欲しかった。
    主役交代の前夜を描くエピソードをラストに持って来たのは効果的。
    このロボット役2人、抑制の効いた台詞でキャラが際立つのが面白い。

    ネタバレBOX

    舞台正面奥にはプランターや盆栽のような鉢が並ぶ棚。
    中央の四角い柱に括りつけられているのはいくつものスピーカー。
    下手に上へ上がる階段がある。
    今や「労働」はロボットの仕事になり、人間は怠惰で堕落した生活を送っているという設定。

    エピソード1:人間であることの証明
    4人の中に1人だけロボットがいる、それを探し出して特定せよ、
    というバイトに応募した4人が自分は人間だという証明に躍起になる…。
    カレル・チャベックの戯曲「R.U.R」が多大な影響を与えたと当日パンフにあるが
    100年近く前に書かれた戯曲の科学的背景に忠実なのか
    “針で突いて赤い血が出たら人間”…みたいなレベルがちょっと物足りない。
    演出の指示かもしれないが、役者さんの声が大きくて逆にメリハリがなくなったのが残念。
    劇場に動かし難い柱がある以上、役者の動きに何か工夫が必要と感じた。

    エピソード2:人とロボットの共存
    ついに全世界のロボット全てに電気信号が送られ、彼らが一斉に蜂起する。
    ロボットを生み出した研究所では、「話し合えばロボットと共存できるかも…」と
    切羽詰まったとはいえ、科学者としてちょっと甘いんじゃないか的な判断をして案の定…。
    もう少しテンポ良く展開したら、
    ロボット製造技術を独占するため一切の資料を残さなかった企業のエゴとか
    混乱→絶望→取引案→絶望→話し合おうという流れがくっきりしたかと思う。

    エピソード3:最後の1人
    たった1人生き残った人間はただの農夫だった。
    ロボット達は彼を“神”と呼び「どうかロボットの製造方法をおしえてください」と祈る。
    何もできない孤独な農夫は奇跡を願いつつ世話係の旧型ロボットに執着するが
    彼女はロボットとしての寿命が尽きようとしていた…。
    必要な人間とそうでない人間の区別もなく殺してしまったロボットの浅はかさが
    やっぱり人類にとって代わるほどのものではないんだなあと感じさせる。
    地球を支配するにはもう少し頭が良くないとダメなんだよ、解ったかね明智君って感じ。

    エピソード4:きっかけ
    4つの中で一番舞台空間が完成していた作品。
    “きっかけ”があれば、ロボットにも“愛”が解るのではないかと期待する科学者の男。
    孤独な彼の助手は旧型ロボットだったので、ロボット言語しか話せず
    コミュニケーションがうまく取れない。
    そこで科学者は新型ロボットを導入して通訳させようと考える。
    しかし旧型ロボットは、誰よりも科学者を理解し感謝の心を持っていたのだった…。

    人に有ってロボットに無いもの、コミュニケーションのあり方などを考えさせる。
    それまでの饒舌さが抑えられ、少ない台詞と静かな間で初めて情緒が生まれた。
    表情の変化も自己主張もない、解説するだけのロボットに個性が生じるのが面白い。
    まさに“手に手を取って”2体のロボットが外の世界へと旅立つって、いいじゃないか。
    たとえその結果がロボットの一斉蜂起であり、人類の終わりであったとしても。

    手法に粗さが目立つが、一環したテーマを追い続ける姿勢は評価したい。
    “最高傑作”を作った人間の皮肉な行く末、次に夢を見る者は誰か、
    次回公演の「A.I.」にその答えがあるのだろうか。

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    2013/09/18 03:46

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