被告人~裁判記録より~ 公演情報 アロッタファジャイナ「被告人~裁判記録より~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    被告に何を見るか
    一緒に観た友人が「写真のような芝居だった」と感想を述べました。
    まさに、言いえて妙。
    物語があって「こうしてこうしてこうなりました」という明確なオチがあるのではなく、ポンと切り取った場面で、観る人の思いに任せる絵画的な芝居だったと思います。
    被告人たちの言葉から感じるものは、観客によって大きく違う(そのあたりはネタばれで)が、だからこそ面白いと思いました。

    開演前に当日パンフの「事件概要と演目の内容」を読むようにと再三アナウンスがあり、私もしっかり読んでしまいましたが、読まない方が良かったと思いました(笑)
    色々な想像力をかきたてられてから見ても遅くない。
    絵画の解釈も、自分が鑑賞してから教えてもらいたいし。

    ネタバレBOX

    1話めの秋葉原無差別殺傷殺人事件(被告人:加藤智大)
    私がアンケートに書いたのは『母親のせいにすんな!お前なんか死刑だ!』という身も蓋もないものでした。
    当時秋葉原をフラフラしていた(メイド喫茶の方じゃなくってフィギュア系のほうでね)私は、被害者たちを全くの他人とは思えず、加藤には憤りを感じていたので、被告の言葉が(弁護人の誘導も)酷く自分勝手で、自分の弱さを責任転嫁しているとしか思えません。
    ところが、一緒に観た友人は「母親が(そしてそれを見て見ぬふりしていた父親が)悪い」と言いました。ドびっくり。
    そして彼女は「あの秋葉原無差別殺人事件の本当の犯人は、加藤の両親だ」とまで言って、私に軽いカルチャーショックを与えました。
    私が一番共感できなかった被告に、彼女は一番しっくりきた?ようす。
    息子を持つ母親と子どものいない(が為にいい年してもいつまでたっても子ども目線)私とでは、全然違うものを見ていたのだなあ。


    2話め結婚詐欺・連続不審死事件(被告人:木嶋佳苗)
    割と最近TVで藤山直美のやった『悪女』を見ていたので、つい比べてしまい、「あれに比べて毒が無いなあ」とか「木島早苗役のナカヤマミチコさんが美人過ぎるよなあ」とかよけいなことを考えてしまいました。
    会話も展開も予定調和。


    3話め日本社会党委員長刺殺事件(被告人:山口二矢)
    話うんぬんより(失敬)、宇野愛海さんの横顔が美少女すぎて目が釘付けでした。アンケートにもそれしか書かなかったと思います(笑)
    そして今しみじみ思うのは、あの「純真無垢な美少女」は、山口被告の理想とした、守るべき国そのものだったのだなあ。

    (余談ですが、実際の山口二矢の写真と演じていた塩顕治くんはとてもよく似ていると思います。似せたのかな?)


    4話め226事件(被告人:磯部浅一)
    個人的には、これが一番芝居らしくて面白かった。
    磯部浅一の「天皇陛下、何という御失政でありますか」の叫びの場面は、切なかったです。磔にされたキリストが「わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と言う姿を彷彿としました。
    人によっては、あの叫びを狂人の妄執とか怨念とか見るかもしませんが、私には、信じていた神(天皇陛下)に裏切られ血を流している痛ましい聖人に見えたのです。


    最後、異端審問裁判(被告人:ジャンヌ・ダルク)
    ジャンヌダルクといえば、幼い日に胸ときめかした美内すずえ先生の『白ゆりの騎士』
    どんな場面を切り取ってくるのか、ジャンヌの役者は誰なのか、と期待していましたら、なんという落とし穴!蝋燭一本という演出のため、眼鏡を忘れた(というかル・デコだからいらないと勝手に侮っていた)老眼(鳥目)著しい私には、役者の声と歩いている座っているといった動きしか分かりませんでした。
    私の座っていた位置もよろしくなかった。

    ラジオドラマのように声だけ味わいましたが、神の子ジャンヌが自白強要された冤罪被告のようだなあと思いました。
    ある意味もっとも人間らしい。5人の被告の中で。

    0

    2013/08/31 07:30

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大