被告人~裁判記録より~ 公演情報 アロッタファジャイナ「被告人~裁判記録より~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    面白い企画
    とても面白い企画だと思った。

    ただ、実際の裁判記録に基づいた実験公演と銘打っていたので、ポストドラマ/ドキュメンタリー演劇のような、一般的な演劇を解体するような試みかと期待していたが、芝居自体は極めて正攻法の芝居だった。
    それでも、逆から言えば、特殊な試みなれど、一つの芝居としてよくできていたという言い方もできる。

    物語としては、、、

    ネタバレBOX

    5つの物語が演じられるのだが、数ある事件の中で、なぜこの5つの裁判の、更にこの場面を選んだのか、作者が向き合っているものがわからなかった。勿論、5つの物語を繋ぐ表面的なテーマ(正義、悪、罪、、、それを裁くということなど)はわかるが、その5つを並べることで、何を顕在化させようとしてるのかがわからなかった。

    事実に基づいた、作者ありきではない作品という姿勢であったとしても、作者を解体するような(ポストドラマ的な)構成・演出がなされている訳ではないため、作品に対して作家の意志(批評性)を観客としてはどうしても観ようとしてしまう。ドキュメンタリー映画などは典型的な例だが、事実に基づこうが、その事実の中から何を選ぶか、どう編集するかは、ある意味ではフィクション以上に、その作家の批評性が問われる。それが見えないのが残念だった。

    また、最終話の「ジャンヌ・ダルク異端審問裁判」で、それまで事実に基づいた話というリアリティを持って観てきたものが、一気に神話のような話になってしまい、結局フィクションを観たという印象で芝居を見終えたのも残念だった。
    これは、演目1・2は日本の現代もの、演目3は日本の戦後(1960年の事件)、演目4は日本の戦前(1936年の事件)と来ての、演目5ではフランスの中世(1412年の事件:ギリギリ近世?)と、上演されている「今ここ」との場所と時間の距離が極端に広がったことが原因だろう。それらの距離が広がれば広がるほど、現実感は希薄となり、事実といえどフィクション化されていく、神話化されていく。そのことに対する批評性が作家にあったなら納得するが、そういう問いかけでこの作品が構成されているようには思えなかった。

    演出面では、舞台が四面客席で囲まれている上に、客席の中(最前列)の椅子に役者が座って演技をするなど、役者と客との距離が近すぎて、客のリアクションが気になって、最初は舞台に集中できなかったが、慣れてくると、むしろその近さが妙な緊張感を生んで、とても刺激的だった。この芝居で、内容よりもこの演出の方が実験的だったと思う。
    (ただ、私の席ではそう感じたが、終始単に観づらいとイライラした人もいたかもしれない。)

    演技としては、演目4「226事件」の陸軍法務官役:大森勇一さんの演技が素晴らしかった。

    残念だった点ばかり指摘してしまったが、やはりこの企画自体がとても魅力的だったため、観客としての欲が出てしまったが故のもの。悪く思わないでください。

    なんだかんだ言いながらも、面白く観劇した。

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    2013/08/27 23:49

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