誰ひとり欠けられない、超絶コメディ
沖縄県八重山高校演劇部は、日本最南端にある演劇部だという。
あまり多くの内容を語っても仕方ない。
この安定感、この親しみ、この笑いは、「域」を越えている。
クラスメイトの際立ったキャラクター設定が、アップルパイの生地のように重なり合い、全体として蒸気機関車を動かすパワーを稼働させた。
3時間であっても、教室での文化祭を巡るコメディは続けられるだろう。
「プリキュア•マニア」のクラス会長、イケメンぶっているサッカー部男子、茶髪のチャラい女子…。
以上、列記してみたものの、登場人物の抜粋など 私にはできない。
8人の生徒全員が欠かすことのできない役であり、それがアップルパイのような一体感を醸し出す。
「差」が、互いに化学反応を起こした結果、そこへ現れたのは「見事な調和」であった。
もし、「ウシ」の解体ショー(畜産家業跡取りの生徒 提案)が あったなら、観客も生き物とは何かを考える機会となった。
「領土問題」についても、また しかりである。
沖縄県にとって、在日米軍の存在は経済より 生活上のテーマだ。
私は沖縄県で最も高視聴率を取るコント番組を、代々木公園で開された「おきなわ まつり2013」で観ている。
三つのコントのうち、在日米軍と関係するネタ(含む)は二つだった。
一本目は、「キングジョー大佐」のコント。彼が沖縄県民の「あるある」を述べ、部下が「イエッサー」と応えるコントである。
なぜ、沖縄で うけるのだろうか?
(私が観た回は「内地」の人向け に構成した面もあるかもしれないが)
それは、沖縄県民の人々おいて、在日米軍の存在は生活=文化風習の段階まで入り込んでしまっているためだ。
世界中を見渡して、他国の軍隊が地元の文化風習に これほど密接、ダイレクトな影響を及ぼす国は あり得るか?
その是非を述べているのではなく、沖縄の番組や、舞台を観る度 そう感じざるをえない私がいるのだ。
八重山高校演劇部の舞台は、ネオ•コメディだった。そして、自然な形で「領土問題」を文化祭行事の提案の一つとして生徒同士 が語り合う場面…。
「領土問題」の先をみれば、「オスプレイ」がある。
在日米軍の基地問題は、沖縄県民から切り離せない。
そういった、沖縄ならではの話題も盛りつつ、笑い溢れる時間が流れた。
幕間インタビューで畜産家業の跡取り役の高校生を演じた彼は、こう語っている。
「内地から来た人に、『良い意味で変わってるね』と言われます」
私は、この舞台が高校演劇、あるいは舞台全てのメジャー=標準化になって欲しいとさえ思う。