満足度★★★★
嫌な感じがたまらない
開演前から心がザワザワするような嫌な感じのBGMの中、観客は「スポンジ」の世界の入口に立つ。きっと「何かが起こる」と感じながら。
高校時代の同級生である男2人が共同経営する整体院が舞台となり、2人がテレビ取材を受けているところから物語は始まる。しばらくはその日常風景が描かれ何事もなく物語は進行する。ただこの男2人がすでに胡散臭い、嫌な雰囲気を身に纏っている。
その何かが「いつ起こるんだ」と思いながらこちらが油断したところにドーンとショッキングな出来事が起こる。最もまっとうで小市民的雰囲気を漂わせていた女性従業員の神田がランドセル爆弾で話題の新興宗教の教育係だったことが判明する。(彼女の誕生日パーティーで、額縁や大きな壺など、ちょっと変わったプレゼントが渡されるへんてこなシーンの後だったので、こちらは余計油断していてちょっとショックだった。)
その後、経営者の一人、遠藤が昔、ひき逃げ事件を起こした事が判明したり、相方の野村と激しくケンカ別れする過程を描く、など後半になってどんどん悪い方向へ話が進んでいき、重苦しい嫌な雰囲気に包まれていく。従業員の矢吹だけが(彼も十分胡散臭い雰囲気だったが)誠実でまっとうな人間として描かれていていいアクセントになっている。
三人姉妹のシーンの件は、必要だったかどうかは別にして、仕切られたカーテンの向こうで演じられたせいか、さして違和感は感じなかった。
最終的に、出ていったはずの野村がいつの間にか店に戻ってきて遠藤となごやかに話していいる。ラストは仕事をさぼりがちだった野村がやる気を出して役者時代の後輩の肩をもむシーンで終わる。私の好みとしては最後まで重苦しいまま、誰も救われないまま終わると見せかけて、一筋の光明が見えるか見えないかのギリギリのところで余韻を残して幕、となるのがベストかな、という気がする。
独自の世界を表現力豊かに描き上げる「スポンジ」の世界を堪能できる作品だった。