満足度★★★★
ギリシア悲劇とは,どういうものだろう?
ギリシア悲劇とは,どういうものだろう?
ギリシア悲劇は,神話に題材をとる。これは,現代演劇の作劇とか,世界小説の方法とちがっている。ギリシア悲劇は,伝説に近いものだ。伝説では,筋そのものを変えることはほとんどない。古代ギリシアでは,悲劇と喜劇が対立概念とは必ずしもならない。ギリシア悲劇は,楽しみでみんなが観た時代なのか,祭りの儀式として存在しただけのものなのだろうか。女性観客は存在したのか,出入り禁止だったのだろうか。
ギリシア悲劇は,劇であって,叙事詩でも抒情詩でもない。すべてが,台詞と歌詞でできている。ギリシア悲劇の特徴で,殺人場面は直接表現されることはなかった。ギリシア悲劇は,ほとんど1500行ほどのものだ。さらに,場所,筋,時間が,原則ひとつである。
ギリシア悲劇『オイディプス』は,神託を受けて,それを回避しようとする物語である。しかし,主人公は,神託その、ものを回避しようともがく。しかし,結果として,主人公の意図に反して,神託そのものになって,絶望に向かう。おまえは,所詮人間なので,神の意思に逆らっても無駄なのだ。オイディプスは,自分の父が誰で,とにかく真相を追究したかった。真実は,いずれ明らかになる。眼が見えるものには,真実が見えない。見えているときに,見るべきものを何も見ていなかった眼は,闇の中で今後見るべきものを見ることになるのだろうか。
参考文献:ソフォクレース『オイディプス王』とエウリピデース『バッカイ』(逸見喜一郎)