プラモラル 公演情報 公益社団法人日本劇団協議会「プラモラル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    そつがない
    現代演劇のお手本のような脚本・演出。

    上手く構成され、基本を押さえながら、そこからの逸脱も計算されて行われている。
    社会への批評性もある。多義的に様々な解釈ができるようにもなっている。

    また、演劇の嘘を相対化する視点もあり、旧来の「演劇」という枠こ越えて演出が為されているようにも見える。

    だが、それらの巧妙さやそつのなさは、逆から見れば、
    許された範囲での逸脱、破綻を取り込んだ上での予定調和にも見える。

    評価されてしかるべき作品だと思うが、
    個人的には、そつがない作品にはあまり惹かれない。

    (最初、満足度★3にしましたが、やはり作品の批評性の強さに★4に変えました。)

    ネタバレBOX

    社会的・個人的な要因が、様々に影響し合って、狂気的な事件は起き、暴力は発露されるということが描かれていて、とてもよかった。

    理由なき犯罪と言われるものの多くは、実際はには理由があって起こっていることで、その点を認識しないと、すべては自己責任だとする政府の施政の責任逃れに無意識的に加担することになる。

    ただし、すべては政治のせいだとする意見にも問題がある。犯罪には、ある倫理を飛び越える個人的な狂気というものが必ず存在し、その引き金がなくしては犯罪的な事象は起こらない。

    その引き金には、個人の欲望が大きく影響していたり、政治に限らない他者から受けた不満などが影響していたりもする。

    これらのことが様々に絡み合い、影響しあって犯罪というものは起こるのだろう。

    この作品でとても印象的だったのは、
    子供がいじめを受け、その復讐のような形でいじめをした子供の一人を傘で何度も殴り、失明させてしまったという母親。
    この母親を犯行に、狂気に導いたのは、単に子供がいじめられているということへの憤りだけではない。彼女自身が、夫から言葉の暴力を日々受けていて、そのストレスがその犯行に影響している。
    また、その夫は、妻の両親から様々な批判を受けていて、その不満が妻への言葉の暴力に繋がっている。
    しかも、その両親がその夫を批判している理由は、社会通念から言ったら至極まっとうな批判であり、その批判自体は暴力とは言えないだろう。ただし、夫からすれば、それがいくら正論であっても、彼にとってはそれは暴力としか見えていない。

    このように、様々な要因が絡まり、暴力は発露する。
    それも、ドミノ倒しのように、その暴力は連鎖し、弱い方に流れる。

    事件になった当事者同士の問題だけで見たら、その犯行は単純な狂気としてしか認識されなかったり、又は、単純な因果関係だけを指摘されて、理由づけされてしまったりするが、それを細かくひも解いていくと、そこには様々な理由が影響しあっている。

    このように様々な要因が複雑に関連して犯罪は起こるが、これは必ずしも犯罪に限ったことではない。社会で起こっている事象は、様々な因果関係が複雑に影響し合い起こっているものだ。そして、それは個人についても同様のことが言える。

    0

    2013/07/26 11:30

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大