満足度★★★★★
『ヴェローナの二紳士』は,非常におもしろい演劇だった。
『ヴェローナの二紳士』は,非常におもしろい演劇だった。最初大好きだった女性がいるのだが,遠方に出かける機会があると,その恋が色あせていく。そのために,今度は,本当に美しい姫に出会ってしまうのだ。ただ,彼は,凡人なので,その後やりたい放題をやって,一番恥をかいてしまうのだ。
彼が子どもであったとか,一度決めた相手があるのだから,誰かに心惹かれるのはおかしい,とかそういう視点も勿論あるだろう。初期のシェークスピア作品ゆえに,作品の完成度が低いとか言うのだが,今回の演劇を観ると結構おもしろかった。むしろ,期待大だった『お気に召すまま』より良かった。
ディケンズ作品もそうだが,内容があっちに飛び,こっちに広がり,さっぱりまとまらないようなことは良くある。書きながら考えているうちに,上演されてしまうこともあるだろう。でも,作品の好き嫌いは,全体の完成度にあるのでなく,その一部に非常に興味深い展開が含まれていることも多い。
恋愛に関する意識,友情というものの意味,そういったものが,180度変化していく現代にあって,『ヴェローナの二紳士』をやることは,意外と好評なのではないだろか。シェークスピア作品にあって,一番上演されなかった作品は,ひょっとすると,もっとも現代人に愛されるかもしれない。