根本宗子お祭り公演~バー公演がバーを飛び出した!~ 公演情報 月刊「根本宗子」「根本宗子お祭り公演~バー公演がバーを飛び出した!~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    オッサン率高すぎ!
     客席のオッサン率が異様に高い公演でした。
    特に、昼夜通し観の客のみが座れる前方指定席。俺も含め、根本宗子の追っかけみたいなオヤジ達がほとんどを占め、観劇中、むさ苦しかったのなんのって。
     ただ、同じ追っかけでもタイプは2派に分かれ、演目と演目の合間、客席やロビーにたびたび姿を見せていた根本さんへ積極的に話しかける人たちがいるかと思えば、“私は純粋に公演を楽しみに来ました”てな顔して根本さんとの接触を一切取らない人たちもいて、後者の一人だった私はお聞きしたいことがいくつかあったにもかかわらず休憩時間中はずっとだんまり。
    「役者さんて基本、運動神経いい人が多いんですか?」「月刊「根本宗子」の稽古にも肉練てあるんですか?」「次回公演『中野の処女がイクッ』って仮題ですか?」などなど、ぶつける価値大の質問をたくさん用意していたのに一つとして聞けずじまい…。
     客席には梨木智香さんのお母様のお姿もあり、「梨木の母でございます」と自らカミングアウトするほど気さくなお母様と周囲のお客さんとの会話を耳をダンボにして盗み聞きして得た情報によれば、お母様は娘さんの公演の大半を観てらっしゃるとのこと。そんなお母様にぜひともお聞きしたかった以下のこともチキンな俺には結局聞けずじまいだった。
    「梨木さんてシャンプーハット時代はどんな演技してたんですか?」
     あぁ~、知りたかったよぉ~~、この質問への答え。
     というのも、月刊「根本宗子」の劇団員としての梨木智香には根本宗子による明確なキャラ付けがなされていて、プレ“月刊「根本宗子」”時代の梨木嬢がどんな演技をしていたのかまったく見当がつかないのである。
     これは劇団主宰者としての根本宗子がいかに梨木智香という役者をきっちり劇団カラーに染め上げたかの証左といってよい。これまでいろんな演出家のもとでいろんなタイプの演技をしてきたに違いない役者としての梨木智香の歴史が無に帰されるほど徹底的な演技改造が根本宗子によって行われ、梨木智香は、バー公演以外でも笑いに大きなウエイトが置かれる月刊「根本宗子」仕様の役者へと、この劇団仕様のコメディエンヌへと生まれ変わったのだ。
     ただ、梨木智香は根本宗子の期待に応えすぎた。期待に応えて面白くなりすぎた。
    「くだらないことをやるためだけに始めた」と根本宗子が言うバー公演の過去作品から自信作を選りすぐり、新作1本を加えて連続上演した今回のイベントで梨木智香に過重な負担がかかってしまったのも、客を笑わせること、楽しませることに重きが置かれたこのイベントがコメディエンヌ梨木智香におんぶに抱っこしないことには成り立たなかったからに他なるまい。
    (ネタバレBOXへ続く)

    ネタバレBOX

     現に、梨木智香が出演した4作品はどれも面白く、また笑えた。もはや十八番の役柄と言ってよい“勝ち気でめんどくさいアラサー女”を演じた「ひかる君ママの復讐」「喫茶室あかねにて」「改正、頑張ってるところ、涙もろいところ、あと全部。2013年初夏」は言うに及ばず、妖艶キャラという新キャラを付けられてまさかの壇蜜(笑)を演じた新作「はなちゃん」もおかしかったのなんの。梨木さんの出番が少ない「はなちゃん」でしたが、やることをやってお役御免となった壇蜜こと梨木さんがすぐにはハケず、しばらく舞台に残り続けて意味なくセクシーポーズをキメていたのが個人的にはとってもツボでした。
     …と、梨木智香の大活躍もあって私にとっては十二分に楽しめた今回の木馬亭公演だが、
    引いた目で客観的に捉えなおすと「これでいいのか!?」と疑問を抱かざるをえない点も。
     私はこの公演を客観視するため、“観劇初体験の友人を誘って観に行ったらどうなっていただろう?”と考えてみたのだが、5演目中3演目が“演劇バックステージもの”だった当公演を演劇に暗い友人が楽しめただろうかと考えると、答えは“否”だ。
     やはり演劇バックステージものだった「ひかる君ママの復讐」終演後にロビーで喫煙していた演劇ビギナーぽいお兄ちゃんが陽気で気さくな売り子さんに感想を求められて返した言葉を私は今でも覚えている。
    「よく分かんなかったス」
     そうなのだ。演劇ファンにとっては面白くてならない演劇バックステージものは門外漢にとっては“よく分からない”劇でしかないのである。
     幕間のトークで根本さんは「梨木さんの当たり役“貧乏劇団員の美津恵さん”を今後封印するかもしれない」と言っておられたが、
    月刊「根本宗子」をもっと大きな劇団にしたいのならばこれは賢明な判断だと言えるだろう。
    「よく分かんなかったス」のお兄ちゃんみたいな人をも巻き込んで動員を増やさないことには月刊「根本宗子」は大きくなれないし、
    演劇門外漢を新規のファンとして取り込むには内輪ウケ要素の強い演劇バックステージものは完全封印するか、たまにやるくらいにとどめないとまずい。
     昼の部と夜の部、それぞれの最後に演劇バックステージものではない新作「はなちゃん」が演じられた意義は以上のような観点からも大きかったと言えよう。
     まずもって、修学旅行で東京に来た関西女子高生3人組が主役というのが取っつきやすくて大衆性があったし、クラスのハミ子である3人が、学生時代に同じくハミ子だったものの今は東京の旅館でイキイキと仲居をしているお姉さんに憧れ、“素晴らしすぎる仲居のお仕事”を教えてもらうというストーリーはあまりにくだらなかったけれど誰もが笑える一般性があったし、ハミ子トリオの1人が大竹沙絵子演じる仲居から“ハミ子出身の仲居”の座を引き継ぎ旅館にとどまるという、ある意味で『猿の惑星』よりも現実味に乏しい結末もぶっ飛んでいながら分かりやすく、楽しかった。月刊「根本宗子」が演劇部外者にも開かれたより大きな劇団になるにはどんなコメディをやればいいか、その方向性が分かりやすく示された本作は月刊「根本宗子」の劇団史をのちに振り返った時、大きな転換点となった記念碑的一作として光り輝くのではないだろうか?
     本作「はなちゃん」はまた準劇団員とも言うべき大竹沙絵子がコメディエンヌ開眼した一作でもあり、その点でも意義深い作品だった。
     根本宗子を除く登場人物全員がコワれているという設定の「ひかる君ママの復讐」をバー夢で観た時、大竹沙絵子の演技だけがハジけきっておらず、結果として狂人に見えず、笑いを取るべきシーンで思うように笑いが取れていなかった記憶があるのだが、「はなちゃん」での大竹沙絵子は吹っきれた演技によって狂人になりきっており、ドッカンドッカン笑いを取っていた。分けても、ハミ子トリオに仲居の仕事を熱血指導する場面。このシーンで白目を剥いたり流し目をしたりニヤついたりと千変万化の表情を見せながら激しく舞台上を動き回りつつハミ子たちを教育する姿の可笑しく、また魅力的だったこと!
     梨木さんはうかうかしておれませんぞ!!

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    2013/07/15 19:56

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