『岸田國士原作コレクション2』 公演情報 オーストラ・マコンドー「『岸田國士原作コレクション2』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    『モノロオグ』と『空の赤きを見て』
    前回のシリーズで岸田戯曲の面白さに改めて舌を巻いたのですが、
    その驚きは今回も褪せることなく・・・。

    観ていてひたすら惹き込まれ、観終わっての余韻にどっぷり浸って。
    今回も、演出や役者たちの演技に、
    戯曲をしっかりと背負い、でも縛られるのではなく、そこから踏み出す力を感じたことでした。

    ネタバレBOX

    『モノロオグ』

    一人芝居。

    会場に洒脱な着物姿の役者が足を踏み入れた瞬間、
    その艶に染められて、空間全体にトーンが生まれる。
    ちょっと古風な所作や言葉の美しさが
    役者の掌にしっかりとのっているのが良い。

    最初は、場での一人語りの態で、
    状況や心情の移ろいが紡ぎ出され、
    観る側もその顛末を受け取っているのですが
    たちまちに舞台と客席の隔たりが消えて、
    その空間全体に
    ロールの心情が溢れだし、巻き込まれていく。

    小さな動きの一つずつや言葉を持った視線とともにつづられる
    台詞のニュアンスに深く捉えれられて、
    気が付けば想いの問わず語りの片端が
    観る側にしたたかに置かれていて・・・。
    表情のひとつずつが、その意味に留まることなく、
    女性の心情の起伏や揺らぎの肌触りとして伝わってくる。

    観客をいじったりもあるのですが、
    そこに至るまでのしなやかな空気の作りこみがあるから、
    その在り様も舞台の更なる深さを導いてきて。

    観終わって、一人の女性の美しさと
    観る側に置かれた心情の一体感が
    しっかりと心に残ったことでした。

    『空の赤きを見て』

    病気の父親と家族の話。
    父親は故郷に帰ることを望んで・・・。
    息子はその金策に走っているらしい。

    病床の空間が切り離されていることで
    舞台に置かれるシーンがすっきりと分かりやすくなっていて。

    役者たちが演じる家族ひとりずつの想いには、
    単に台詞に表されるにとどまらない
    奥行きが作られていて。
    それも、いろんな温度を持って重ねられていく感じが良い。
    役者たちそれぞれが担うキャラクターのありようが
    底堅い演技の力量で観る側に置かれていくのですが、
    そこには単に演じられるにとどまらない、
    個々によく抑制された解け方のようなものがあって、
    観る側が場の空気全体を急ぐことなくしなやかに受け取ることができて。
    強く表立つことなく、一方でとてもデリケートな質感が
    とてもナチュラルなものとして訪れるのです。

    家族から見て外側の人間が訪れたときの
    空気の変化も良く作られていて。
    一か所だけ、ロールたちがそれぞれに醸す空気が
    エアポケットに入ったようにすっと乖離して
    切れたように感じてしまう部分もあったのですが、
    でも、そのことで、
    この空間の織り上げ方の繊細さに改めて思い当たったりも。

    末期の父親と、
    それをそれぞれに看取る家族の風景が、
    観る側にも感触としてしみこんできて
    観終わって、それから一呼吸おいて、
    深く浸潤される感覚がありました。

    *** ***

    岸田戯曲の魅力を満喫しつつ、
    でも、それが戯曲の仕組みだけではない
    演出や役者の力や創意によって、より引きだされていることにも
    思い当たって。

    「もっと見たい!」欲求に再び捉われたことした。

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    2013/07/15 08:29

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