満足度★★★★
小劇場的エンタテインメントだなー
小さななアパートを舞台に巻き起こる出来事を描く群像劇というのはありがちな設定だが、小規模の小屋で行われる芝居には一番シックリくるじゃないだろうか。
群像劇でたまに見られるのは、登場人物の紹介的な内容が長く、各人のキャラクターが不明瞭なまま進行していくという展開。この作品はそんな危惧をはね飛ばし、各人のキャラクターの輪郭が明瞭かつ個性豊かで観る者を存分に楽しませてくれる。
物語の方もドラマとコメディの要素がうまく融合していエンタテインメントの要素も十分だ。
印象的なシーンはアパートの管理人、渡橋美奈子が折り合いが悪かった兄嫁の差し入れである砂糖のかかったトマトをむさぼるよう食べるシーン。彼女の本音が吐露され、そこに兄嫁の思いが重なり、こちらの胸に沁みこんでくるような美しいシーンだった。
もうひとつ、役者で注目したのが双数姉妹の辻沢綾香さん。彼女はいくつかの舞台の客演で拝見していたが、今回も個性的なキャラを演じ切って大いに笑わせてくれた。今後も期待の女優さんです。