『うそつき』/『屋上庭園』/『千両みかん』 公演情報 アマヤドリ「『うそつき』/『屋上庭園』/『千両みかん』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    うそつきを拝見
     実に微妙な戦争状態の中での他所者対仲間、男と女、事実と嘘、混み入った関係の中でのファクトの証明の不可能性等々、頗るデリケートな問題群を敢えて俎上に載せ、舞台化した意欲作。知的で繊細、而も、演出、役者の技量を露骨に問うような緊迫した舞台で、流石、本家の貫録を見せた作品作りであった。この舞台成功の秘訣は、精巧に作られたパズルのようなシナリオの本質を過つ所なく捉え、観客に納得のゆく形にして観せた辺り、作品解釈の深さにその鍵があるように思われる。

    ネタバレBOX

     舞台は都市国家カルタゴのガソリンスタンド、クッキーも出す一風変わったカフェ風の場所カルタゴノヴァ。隣国、スコピオとは、休戦を挟んでは居てもずっと戦争状態にあり、エレファントと呼ばれる無敵の武器を持つ強国、スコピオには近年やられっぱなしである。当然のことながら、互いの国民は、疑心暗鬼に陥り、他所者が来たとなれば、スパイの嫌疑を掛ける。 
     このような情況下、店に居るギーコを訪ねて板垣と名乗る男がやって来た。彼は、ギーコと昔暮らし、金を貸していたので、返して欲しい、という理由で訪れたのだが、実際に、ギーコと面通ししても埒が明かない。ギーコの暮らした、板垣の顔とは全然違っていたので、板垣であるのかそうでないのか、確証が持てないのである。板垣は、日記を見せたり、軍からギーコ宛てに届いていた板垣の死亡通知が間違いであるとの説明を繰り返したり、何故、顔が変わってしまったか理由を明かしたりするが、どれも決定打にはなり得ない。ギーコにしてからが、板垣の耳の後ろにあった黒子でも確信が持てず、寝てみても分からない。だが、二人はそれでも段々に親しくなり、ギーコも板垣本人だと内心信じてゆくのだが、このスタンドの協同経営者であるスランプの相棒、ナイルは、カルタゴを代表する兵器製造の天才で、どうしても板垣の話を信じることができない。自分の作っていたエレファント技術を盗みに来たスパイではないか、との疑いを払拭できないのだ。但し、板垣を腕ずくで追い出すこともできないのは、どこかで板垣の言う事の事実性を完全には否定できない、と科学者として冷静に考えているからでもあろう。
     因みに、クッキーコンテストで佳作を取るほどの腕を持つスランプが、実は、ナイル作のエレファントであるという落ちも用意されているが、軍の科学者として、自分のボディーガードに強力な援軍を置いておくのは当然のことであろう。
     連続するシリーズの一部ということだが、実に、スリリングな舞台に仕上がっている。集中して観るべき舞台だ。
     

    0

    2013/06/29 05:27

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大