断色~danjiki~ 公演情報 ヴィレッヂ「断色~danjiki~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    見ました
    震災2ヶ月前に上演された、おにぎり(村木仁、池谷のぶえ、市川しんペーの各氏)の前作『断食』と多少リンクしている部分はあるが「色」と、生と死と性、環境と記憶の人間模様が見られた近未来話。
    作家青木さんと演出のいのうえさんは前作と同じだが、役者の変わった今回は変態成分多め、その下ネタの多さに閉口もあったが、壮絶さはこちらの方が大きいと思った。
    新感線初期の、いのうえさんがつかさんの舞台をやっていた時ってこんな感じの舞台だったのかも。
    上演直前にある曲がほぼ一曲流れる、観劇後で思ったが、舞台の内容にイメージした選曲だった。
    堤さんの発汗量の多さに驚く、最前列は汗被り席状態。ただ、最後の場面は一部の座席からは死角になるので残念な思いを味わう堤さんファンもいるかも。つい先日ご結婚されたが、まだ独身のままだったらちょっとシャレにならない(笑えるけど)劇中の台詞も聞かれたりする。
    約110分。

    随所に見応えもあったし深く考える部分は同じで面白かったし、役者も異なる作品内容で比べても仕方ないが、個人的にはおにぎり版の「断食」の内容の方が好きだ。

    ネタバレBOX

    配役(おにぎり版の役名/ヴィレッジ版の役名)
    杉浦哲(村木)/小林保(堤)
    杉浦朝子・哲の母(池谷)/小林朝子・夕子(麻生)
    矢作(市川)/刈谷(田中)

    嫁に逃げられ、田舎で苺の有機栽培農業を行っている借金だらけの色盲の保、
    保の母の残したクローン保険で生産された容姿が保の母そっくりの夕子、
    それを取り扱う保険会社外交員の刈谷

    冒頭から防護服をイメージしそうな作業着姿の数人が舞台セットを作る。無農薬畑で苺を作っている保だがなかなか農作物は育たない、そこへやってきた保険会社の刈谷、いきなり「母親は生前自分のクローンを作った。乳ガンに罹患し、クローン乳房の移植手術は行ったが腎臓ガンの合併症により移植の甲斐もなく亡くなった」と宣告する。で、保険で作られたクローンは保険会社が処分するか解放するか、ざっくり言うと殺傷処分か生かして社会生活を送らせるか二者択一のみ。さあ、どちらを選択するのか悩む保。
    前半はコミカル+下ネタ要素多めだが、三人の本音が判り始めた中盤部分から次第にエグさと壮絶さが絡まり緊迫した場面が続く。

    クローンとして生まれてきた夕子が発する猥雑な台詞や行動の時の無表情から、母親の表情から自我が目覚めた行動の表情、切り替えは素晴らしかった。生身の母親だけどシワがないのはご愛嬌だ。
    刈谷の本性の嫌みさがまた憎々しい。
    実直さとちょっと抜けてる保もいい人。朝子と並んだ姿は大袈裟でなく、ちゃんと母と子に見えた。
    今作に限らず、今回も密閉された円形劇場の壁を使った映像処理、円形劇場ならではの見せ方がまた効果的。
    朝子の保の思う気持ちが随所に表れ、たまに挿入された暗転が母親の胎内のような錯覚を覚える。保にしてみれば暗くて切ない記憶を呼び起こされた末の行為に少し考えさせられた。
    北と南に隔離分断され汚染された風土に人工物だらけ。近未来の日本の設定だけど、どこか現代の風景にも似ている。
    生活が困窮している割にクローン保険代は母親の前払いだったんだろうか。
    もう一回見たいけど、もうチケットは取れそうにない。無念。
    独特な畏怖SF作品を見たような感じだが魅力的な舞台だった。

    おにぎり版では、のぶえさんのクローン登場時の可愛さと生身の母の恰幅の良さの対比、金目鯛の煮付け(人工物)、断食道場で減量、夕子と矢作の男女関係、哲の精神がクローン化、男女関係の末のクローン処分の仕方、哲はナイフで殺される。等を覚えている。
    観劇日のアフタートークでゲストが青木さんといのうえさんと橋本じゅんさんだった。じゅんさんは入院生活から復帰した直後だったので元気な姿を見られてホッとし、またお話の内容から自分も活力を戴いたような覚えがある。

    0

    2013/06/25 03:35

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大