ココロに花を 公演情報 ピンク地底人「ココロに花を」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    若者のナイーブな不安と悲しみ
     意識が戻らない病人たちがそれぞれのベッドに横たわる中、殺人事件の犯人探しが始まります。取調室での嘘の自白、次々と増える意識不明の病人など、サスペンス・タッチで進む複数の物語には、夢の中の邂逅といったSF要素もシームレスに組み入れられていました。

     物語上で起こる物音を擬音語、擬態語などを使った人の声で表現するのが劇団の持ち味で、俳優は舞台上下(かみしも)の端にいながら、声を使って効果音の役割を果たしていました。淡々と存在しているのがいいですね。騒音だけでなく街にあふれる言葉も混ぜ合わさるのが面白かったです。

     劇場の壁をそのまま使ったブラックボックスで、道具や衣裳の色を白、黒、赤等に絞り、統一感のあるシャープな空間にしていました。黒く塗った椅子やテーブルに白い線で縁取りをしているのが良かったです。白線に注目すると空洞をはらんだ骨組が浮かび上がり、捕らえ所のない空疎さや満たされない心などの抽象的な表現にもなっていたように思います。

    ネタバレBOX

     ベッドに横たわるのは政治家の息子、刑事の妻、女子高生の兄(大学生)。現実世界では植物人間ですが、彼らが夢の中で家族などと語らうシーンがあり、本当は意識もあるし耳も聞こえているんじゃないかという疑いが生まれました。乙一さんの短編小説「失はれる物語」を思い出しつつ、人間には感知できない世界を想像しました。

     快復して記憶を取り戻した政治家の息子は、自分がある交通事故の加害者であることに気づいて自首しようとします。でも事故発生時に車に同乗していた友人や、主治医に止められるのです。理由は彼が政治家の息子だから。幼いころに教えられた善いこと、悪いことが、なし崩し的に捻じ曲げられたり、逆転してしまっているのは、まさしく原発事故後の日本の姿だと思います。

     国際問題への言及とともに「私たちは歴史を知らなきゃいけない」という決意も登場人物によって語られました。今の10~20代の方々とお会いすると、皆さんがすごく真面目で賢いことに驚かされます。私が同じ年の頃はもっと楽観的で馬鹿でした。インターネットによって世界中の出来事がオンタイムで自分の現実に流れ込んできて、何でも検索すれば概要ぐらいは知ることができるようになったせいで、楽観的な馬鹿であることが難しくなったんだろうと思います。理不尽極まりない残酷な愚行だらけの世界を見せられたら、誰だって将来が不安になりますし、人間に心底がっかりするものですよね。

     犯人逮捕というすっきりとした成果は得られず、殺人未遂事件が次々と起こり、刑事は「きりがない、お手挙げだ」と静かに吐き捨てます。衝動的な暴力が無数に連鎖していくエンディングは、悲しみがひたひたと空間全体に満ちて行くようでした。
     劇中に一度あった暗転の後が長いと感じました。最後の暗転直前のシーンは不要だったのではないでしょうか。終演時の暗転の味わいが良かっただけに、もったいないと思いました。

     終演後に作・演出のピンク地底人3号さんとお話しすることができました。会話劇を書いたのは今回が初めてと伺い、驚きました。ト書きばかりの戯曲の上演も観てみたいですが、京都に暮らす地底人独特のセンスを生かした会話劇にも、またチャレンジされると良いのではないかと思います。

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    2013/06/17 15:00

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