キエンノキ 公演情報 おちないリンゴ「キエンノキ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 掴みどころがない、山奥の者たち
    バレてないネタバレを どうぞ。

    ネタバレBOX

    大人の空気に包まれた舞台は、妙な安心感すら 漂う。

    過疎の村で子供を期待されながら在住する若い夫婦の旦那には、同じ職場(養鶏場)で働く愛人がいた。その愛人は、身寄りがおらず、幼きころ旦那の実家に預けられ、同じ家で暮らした過去があった。
    「昼ドラ」の題材として、テレビ局が飛び付きそうな内容ではないか。

    しかし、舞台は、そうした“ドロドロ”した大人の題材でありながらも、謎の人「佐藤さん」の存在のため、深い霧に覆われた非日常性である。

    山村の、奥。不法投棄が横行しているだろうと思われる山路に、その西洋風ラブホテルは建つ。
    石原真理子氏の「ふぞろいな林檎」の一節を、オーナーが読み上げる。

    何なのだろうか、山奥のラブホテル内の空気は。
    男に、女に、仕事に、介護に、村という人間社会のなかで暮らし疲れたもの達が 集結する。みな、村の誰かへ腹が煮えくり返っているのにもかかわらず、山奥のラブホテルに滞在する連中は 平然と装う。
    血みどろの“ドロドロ”が あたりの部屋に飛び散る。
    連中は、知らないフリして、全部、分かってる。

    断定をせず、答えが存在しない舞台は退屈だ。ストーリーで、観客に訴え掛けることは困難だからである。
    その代わり、EUの名作映画に見られる「空気」「雰囲気」が物を言う。それぞれの観客が過ごした、その体験こそが舞台の感想だ。


    激しい動きは中央の台をグルグルと廻る場面くらいだったが、全体を通して役者陣の身体性を強く感じられた。
    そこに居ることが、(登場)人物の歴史を現す。


    山奥のラブホテルは、緑の生い茂る都会だった。

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    2013/06/08 23:08

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