岸田國士原作コレクション 公演情報 オーストラ・マコンドー「岸田國士原作コレクション」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    岸田國士がおもしろすぎる(まずはC)
    知識が浅いもので、
    岸田戯曲がこんなに面白いなんて知りませんでした。

    会場も演出の創意を解き放つに十分な
    フレキシビリティを持っていて。
    作品に加えて見せ方にも様々な工夫が感じられて・・・

    まずはC観ましたが、どの作品にももれなく引き込まれ、
    しかも一つずつの作品に異なる魅力がありました。

    ネタバレBOX

    まずは、5/25ソワレにてCの三作を・・・

    「モノロオグ」

    女性の一人語りなのですが、演じるのは男優。
    役者が登場の際にはちょっとびっくりするのですが・・・。
    女優が演じると、ちょっと生々しくなりそうな戯曲が
    ジェンダーが変わることで、骨格のおもしろさや、
    良い意味で上手く削がれた想いの姿として
    織り上がっていく。

    しかも、役者の身体の使い方が、なにげすごいのですよ。
    左右の足の動きが、しっかりと直線で内外に交差して、
    ぶれない。
    そのタイトさが、女性の線の細さとなり、
    その上にのる手や首の動きも
    女性のものとして観る側に女性が醸す様々なニュアンスを伝えていく。

    最初こそ、男性の演じる女性という印象で観ていましたが、
    ちょっと客をいじる枕のような時間の中で、
    語られることは紛うことなき女性の物語になって。
    しかも、女性がことばを濁し隠すような想いの内側すら
    男優だと逆に違和感なく舞台に乗せられていって。

    戯曲に描きこまれた女性の心情が、
    女性の色で揺らぎ、観る側に伝わってきたことでした。

    「クロニック モノロゲ」

    短編の戯曲なのですが、構造がちょっぴり複雑で、
    物語の進行にしたがって、
    その場のありようや、物事の真相が
    変わっていく。
    戯曲がもつ構造を、二人の女優がジェンダーを乗り越えて、
    一歩ずつ観る側とともに歩んでいきます。

    この作品も、
    役者たちの身体の使い方がさりげなく裏打ちされていて、
    台詞に加えて、そのナチュラルな動きで
    舞台を満たしていた冒頭の女性の視座が
    やはり女優が演じる男性の表層に導かれ、
    次第に塗り替わり、
    男性の想いの表裏の様相に置き換わっていく。

    作品が2人芝居として演じられるなかで、
    表見上の男性を女優が演じることが、
    冒頭の女性が二役の如く
    その内心の声となることの違和感を拭い去っていて。
    また、それは、冒頭から女性の色香がしっかりと描き込まれ、
    男の所作が、身体の使い方も含めて
    良く作りこまれていることにも担保されていて。

    この作品を同じジェンダーの2人で演じることで
    戯曲の構造に内包されているニュアンスが
    さらに際立って伝わってきたようにも思えました。

    最初の2作品は上野演出でしたが、
    ともに女性の振舞いや伝わってくる内心が
    とても細微に女性の質感や美しさを伝えていて。
    女性の美しさを、あざとさを持たずに
    とてもナチュラルに導き出す
    演出家ならではの戯曲の取り込みに惹かれたことでした。

    「風俗時評」

    休憩をはさんで、場内の雰囲気も緩んだ場内に、
    いきなり20人近い役者たちが、
    制服や戯画的な衣装を纏って
    それこそ軍靴の音を響かせるように入り込んでくる。
    元々そんなに広い会場でもないわけで、
    役者たちが客席的なエリアすら舞台に変えて
    場内には一気に溢れかえるような混沌が形成されます。

    そこに章が切られ、
    様々なシーンが重ねられていく。
    最初は、医院で、
    突然ある部位を痛みに襲われるという奇病を治療する姿なのですが、
    やがて、警察や学校、さらには床屋や家庭やホテルにまで
    舞台は移り、
    次第にその時代の、様々な階層のありようが
    切り出されていきます。

    その、一つずつのシーンはどこか突飛で、
    デフォルメされていて、
    時に薄っぺらくコミカルでもあるのですが、
    シーンを支える役者たちには、
    そのなかに織り込まれた人物のありようと
    見識や思想の深浅をしなやかに担保するに十分な力量があって、
    会場を満たし続けるテンションと、
    積み上がっていくそれぞれのシーンが、
    そして痛みの有無や現われ方につづられて・・・。
    もっと言えば、役者たちが、それぞれのロールを
    その空気の中で貫いているからこそ、成り立ち、
    見続けうる作品でもあって。
    気が付けば、その時代の様相や閉塞に
    会場全体がどっぷりと浸されている。

    それと、この作品、
    実はシーン自体やそれを繋ぐ役者たちの動きが
    とてもよく研がれていて、
    メリハリや切っ先をともなって
    観る側に常にインパクトを与え続け、
    その世界のありようを描き続けていて。
    そこには実にしたたかな舞台のフォーメーションや
    所作があって、
    台詞で紡がれる世界観を
    群舞のごとき動きが要所でしっかりと支えていることにも
    思い当たる。

    最後に、それが2.26事件の直前の
    姿の描写であることが差し入れられます。
    (戯曲のまま)
    舞台は映像などとともに
    しっかりとその座標をさだめて・・・
    そこに、時代の、生き物の如くの、
    抗うことのできないうねりを感じて、
    底知れない感覚に深く捉われたことでした。

    *** ***

    まだ、公演期間の前半ということで、この舞台、さらに様々に熟していく予感もあって。

    また、他のバージョンを観ることも本当にたのしみになりました。

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    2013/05/27 07:31

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