ロボティクス・ノーツ 公演情報 トライフルエンターテインメント「ロボティクス・ノーツ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 日本の「人ーロボット」の歴史を再認識

    何より革新性があったのは、毎回ゲストを招き、出演者とロボット対決をしてしまうコーナーである。

    通常、舞台というのは、脚本と演出家の頭が考えた“作品”を素直に上演してみせるものである。
    舞台こそリアリズムであり、人間の対話だが、あくまでNHKの教育放送のように決められたことしなければならない。
    その点でいえば,『ロボティックス•ノーツ』のロボット対決コーナーは ニコニコ動画の生放送ではないか。

    ニコ生と表現したのは、出演者とゲストの対戦の模様を、小型カメラで撮影し、舞台のモニターで生中継するシステムだったからだ。
    手ブレは生じてしまうし、編集や画面切り替え が不可であるところが ニコ生と表現できる。

    私が観た回は、ゲストがアニメ声優の女性だった。
    出演者も、「あの声優さん、かわいいわね!」とゲストに対する配慮を忘れない。
    男性ゲストなら、「あの○○さん、かっこいいわね!」か。

    ロボット対決の対戦内容は、第一回戦が向かい側に置いてある風船を先に刺す、第二回戦がロボットの背中に付けられた風船を刺す、だった。
    第一回戦では出演者が、第二回戦ではゲストが、それぞれ風船の割れる音を劇場に響かせた。

    決めの第三回戦は「ストーリーの進行上」(レフリー)と前置きされ、出演者が  見事?に駒を進める。

    日本のロボット技術を語るうえで、鉄腕アトムは 避けて通ることのできない存在だろう。
    手塚治虫が世に発表した国民的漫画キャラクター。今も生まれた場所とされる高田馬場の高架下にはアトムの笑顔がある。ちなみに御茶ノ水には、そうした記念物はない。

     動力は原子力。その点を取り1970年代「平和利用という名の下、原子力発電の建設を誘導する作品」と原発建設反対派から非難を受けた歴史があるが、手塚治虫自身「原子力発電には反対です」と明言している。


    アトムはトビウオ博士に開発された、原子力式の人間型ロボットだ。しかし、開発の経緯は、トビウオ博士の亡き子供を蘇らせるため、その子に似たロボットを作ることにあった。
    つまり、鉄腕アトムは ロボットとしてではなく、人間として造られたのである。

    2000年代、SONYは犬型ロボット•アイボを発売し、国内にブームが巻き起こった。
    人間が到達できない地点へ、ロボットの機能を通し、到達する。
    これが、世界のロボット開発の常識だろう。

    しかし、この国はアイボを例に取れば解るように、“愛着”を重視する開発方針を貫いてきた。HONDAの二足歩行ロボットを考えてみてほしい。ランドセルを背負った、少年の姿をしている。


    舞台に話を戻すと、種子島高校ロボット研究部に所属する主人公?の少女は自身で造り上げた巨大ロボットに対して、非常な“愛着”を持ち合わせていた。
    JAXAが財政援助を申し込んだにもかかわらず拒絶、かつて姉が設計したオンボロ1号機に“愛着”を感じるからである。

    そうした単なる機能性を超えた、“愛着”としてのロボットは、鉄腕アトムが原点だった。
    ロボット対決が終了した後、巨大ロボットを表すのは人の身体とモニターであった。現代舞踏のキレで、身体の持つ ぬくもりで、日本のロボット開発の歴史性を示すパフォーマンス(作品)だった思う。


    拡散も、一つのテーマだった。
    Twitterや、LINEを通し、ある“つぶやき”が1分も経過せぬうちに世界中へ拡散する時代。パブリックな井戸端会議が、無数に展開されている。
    そうした時代だからこそ、逆に何が本当か分からない。SNSは雑音が多いから、新聞やTVで言っていることを鵜呑みにする。昨年の総選挙は、その例だろう。
    選挙期間中、Twitterで つぶやきリツイートされた政治ワードは『維新』が圧倒的だったのに、新聞、TVが世論調査結果を一斉に発表した直後、それは『自民』に交代した。
    メディアが、“風”を吹き付けると、TwitterやLINEで 数倍の風速となり、世界に拡散する。
    多種多様なサファリパークを提供するはずのSNSが、そのパブリックな井戸端会議的要素によって、ある単一化の方向に誘導されてしまう道具となりうる格好の例が昨年の総選挙だった。

    舞台は、SNSが発展した社会を私たちに考えさせる一石だろう。他方、女子高生がロボットのプログラミングをする社会も、あながち間違いではない。バレーに励む少女がいれば、ロボットに打ち込む少女もいる。

    IT化の社会は幅を広げることに繋がるわけなのだから、種子島高校ロボ研が私たちの目指す姿である。





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    2013/05/24 22:09

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