いやむしろわすれて草 公演情報 こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング「いやむしろわすれて草」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    満島ひかりを食す。
    満島ひかり、前田司郎、青山円形劇場、と、僕的にキラキラしたカードがそろった。で、感想。非常に面白かった。エンターテインメントな舞台を期待すると寝てしまうだろう。これはお腹を満たしたい人向けの料理ではない。ひとかけらしか手に入らない旬の素材を深く深く味わうための料理である。映画では味わうことのできな満島ひかりがそこにいる。そしていまさらながらに、こういう逸品を出す小料理屋として青山円形劇場はぴったりの小屋だったのだなあと感慨深く思う。

    ネタバレBOX

    前田司郎さんの「宮本武蔵」がそうであったように、これは「病弱薄幸の少女の物語」の前田司郎版。「良くある物語」が前田司郎の手になると、新鮮な輝きを取り戻す。

    前田司郎さんの「宮本武蔵」では、宮本武蔵がコミュニケーション障害者として描かれる。人と優しくつながりたい。だが同時に人を恐れる気持ちが先回りして、仲良くなりたい人を敵として認識し殺害してしまう「宮本武蔵」=「コミュニケーション障害者」の「寂しさ」が滑稽に、そして切なく描かれていたのが前田司郎版「宮本武蔵」。

    今回の「いやむしろわすれて草」も同じ。「病弱薄幸の少女」という物語としては幾度も描かれもはや手あかのついたフォーマットが、前田司郎というフィルターを通して描かれることによって、たちまち新鮮な素材となり、切なく美しい姿を取り戻す。

    「病弱薄幸の少女」とは「宮本武蔵」と同じ「コミュニケーション障害者」である。仲良くしたいのに仲良くできない。さびしいのにさびしいと言えない。それをコミュニケーション障害と名づけるのは簡単だが、それは実のところ我々が日常的に患っている「孤独」の別名である。そんな彼女のコミュニケーション障害っぷりをこんなにもシンプルに滑稽に切なく描くことができるのはやはり前田司郎しかいないだろう。

    終演後楽屋を訪ねて満島ひかりちゃんに聞くと、前田司郎さんとかなり激しいバトルを繰り広げたようだ。しかし、そういうことがあったにせよ、彼女こそは前田司郎がこの物語で描こうとした本質を良く体現していたように思う。

    そして伊藤歩、福田麻由子、菊池亜希子というキャストが素晴らしすぎる。これに満島ひかりを加えた4人が4人姉妹として機能することによって物語がどれほど豊かになるか。キャスティングこそ演出の命と言ってもいいと僕はかねがね思っているがそれを改めて思い知らされる。福田麻由子ちゃんなんて、いままで見た彼女の演技の中で一番素敵なんじゃないか。

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    2013/05/20 17:07

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