メメント・モリ 公演情報 ウンプテンプ・カンパニー「メメント・モリ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    人は死んでも髪が伸びる
    G・ガルシア・マルケスの「愛その他の悪霊について」から想を得た作品だそうで
    “原因不明”と“自由思想”は「悪魔のせい」にする時代を描いた音楽劇。
    それにしても、人は死んでも髪が伸びるって本当?
    “頭蓋骨から22m11㎝も伸びる赤銅色の髪”ってエピソード、怖すぎ…。

    ネタバレBOX

    舞台中央に大きな布で包まれたテーブルのようなものが置かれている。
    出演者全員による合唱から始まり、侯爵が娘のシエルバ・マリアを連れて
    サンタ・クララ修道院を訪れる場面に移る。
    狂犬に噛みつかれた者は、やがて悪魔にとり憑かれたと噂され怖れられるのが常、
    侯爵は苦渋の選択をして娘をここへ連れて来たのだった。
    そしてマリアの悪魔祓いをするためにやって来たのが、青年デラウラ神父であった。
    二人は恋に落ち、当然のことながらそれは許されないものであった…。

    良く分からない病気や原因不明の現象、なじみの無い文化風習、
    そして恋愛さえも、“悪魔の仕業”とされた時代の悲劇を
    「今もおんなじじゃ~ん♪」と歌って皮肉る音楽劇。
    コントロールしにくい要素は徹底的に排斥しようとするとき
    手段を選ばない権力者が選んだ手段は”魔女狩り”だった。

    合唱は歌詞も良く分かるし、ストーリーとして面白く聴いたが
    ソロは相変わらず難し過ぎる歌で、役者泣かせだろうなと思う。
    ウンプテンプの舞台は、この不思議なメロディが芝居のカラーを左右する。
    これを“雰囲気のある旋律”と聴くか“いたずらに難しくしてる”と聴くかで
    舞台の評価が割れるだろうと思う。
    私は7:3で“難しくしてる”が勝ってる印象。
    もし平易なメロディで歌ったらどんな舞台になるだろう。
    芝居そのものがつまらなくなるかしら?
    そんなことはない、むしろ台詞が際立つと思うけど。

    侯爵の後妻ベルナルダを演じた中川安奈さんが、存在感大。
    性格の悪い、それなりの死に方をする女を、意外に太く演じている。
    侯爵夫人に納まりたくて彼を誘惑した、美しく自堕落な女が良かった。

    修道院長を演じた新井純さん、権威と権力の権化みたいな存在がすごい。
    こういう人が社会を動かし、人心を萎縮させたんだろうと想像させる。

    衣装に工夫があって楽しい。
    修道女の制服もパリッとしていて気持ちが良い。
    ベッドを包む布が、場面の切り替えを上手く演出している。

    現代社会の閉塞感が、何となく抑圧された時代と重なって
    学校や会社、様々な組織におけるいじめや迫害を思い出させる。
    人間って常に“魔女狩り”をしたがる危ない生き物なのだ。
    死者の髪の毛が伸びるというエピソードにおののき、それが広まるのは
    どこかに残る良心の欠片が、ほんの少し疼くからに違いない。

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    2013/05/20 01:16

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