満足度★★★★★
『くじらは虹色の音楽にのって2013』を観て
『くじらは虹色の音楽にのって2013』を観て
これは,どういうお話だろうか。主人公の家族は,あるとき,くじらを見るために海外旅行に出る。でも,そのスタートで,交通事故に会って,結果,家族崩壊が始まるのだ。
美里のダメージが大きく,原因不明の障害が頭に残る。夢であった,ヴァイオリニストは絶望的になる。親友も,友達の不幸が起きても,最初はその意味が理解できないので,かえって美里を苦しめる。病院に入院した美里のまわりには,実は,もっと原因不明の重い病人がいることもわかって来る。
この演劇は限りなく暗い。しかし,そこに,少し明るい場面もある。なんの病気かわからないが,とにかく子どもたちに人気のある冗談好きなオバサンの存在。それと,同じような子どもたちの病院生活をなんとか慰問しようとダンスを踊り,ショート・コントをやってみる小学生の存在だ。
この演劇に出て来る両親には,気の毒ではあるが,不注意に対する責任がある。しかし,最大の被害者,美里と,姉の事故を契機に学校生活で孤立していく理沙ふたりは,とてもあわれである。ふたりは,もがけばもがくほど,苦悩に呑みこまれていくのだ。そこには,大人の場当たりの助言も無駄である。
理沙は,最後に,病院のカベに,姉のために,くじらの大きな絵を描くのだ。そのスケールは,共同作業ゆえに巨大で,だれもがびっくりした。これは,夢も希望もなくして,この先泣いてばかり暮らすかもしれなかった,美里に少しだけ勇気,生きるための力を与えてくれた。美里に少しばかりの感動をもたらし,この演劇は終わる。