満足度★★★★★
『なつきとおばけくぬ ぎ』
彩の国さいたま芸術劇場まで,行って来た。そ こで,NEWS自主公演を観た。第一部は,残念 ながら8番からだった。『なつきとおばけくぬ ぎ』は,とてもおもしろかった。
ヒロインの家には,近くに巨木があった。戦後 一度焼け焦げたこともあって,老木は痛みが激 しい。土地は既に不動産会社に買収された。や がて,老人介護の施設になるらしい。あの見苦 しい木が亡くなるのは,それはそれで時代なの だから良い。でも,街には,お化けのような老 木に愛着を持って,それを残そうとする連中が いた。いずれにせよ,あたしには関係もない。 つまらない人生を,なんとなく生きていく。わ たしは,それでいいんだ。
老木の秘めたパワーで,主人公は,母と祖母の 子ども時代にワープする。母の時代は,テレビ が全盛となり,ドリフターズ『全員集合』と か,タケチャンマンなどがはやっていた。その 世界は楽し気だったが,早く元の世界に戻りた い。あの老木に何か秘密があるようだ。次に ワープしたのは,終戦間近の時代で,どうやら おばあちゃんがそこで生きていた。とても恐ろ しい世界で,兵隊さんがやたらいばっていた。 食べ物だって,ひどい有様だ。毒ガスを作り, アメリカ人を殺すことが「正義」だと教えられ て,なつきは愕然とする。
なんとか過去から,戻ることができたなつきは 世界観が一変してしまった。あの戦時日本とい うのは何とクレージーな場所であったか。なつ きは,社会の教員となって,子供たちに真実を 伝えることにする。
この自主公演のレベルはとても高い。内容がい つもわかりやすい。そして感動的であるが, ユーモアもあってあきることがない。昨年のも のは,海外旅行に出かける一家が,お母さんの 不注意から長女に残酷な後遺症をもたらす。こ れが契機で,留守番をしていた妹も含め家族崩 壊に向かう。しかし,病院にいくと,メーテル リンク『青い鳥』さながらに,病気を抱えうつ うつと生きている子供たちもたくさんいたの だ。
セリフは,99%覚えている。大人の演劇でも, たくさんかむ人がいるが凄く練習していると感 じた。テレビなどで役があれば,いつでも出演 できるように待機要員みたいなこともできるひ とたちなのかもしれない。良い意味でも,悪い 意味でも,基本に忠実なのだろう。
満足度★★★★★
『くじらは虹色の音楽にのって2013』を観て
『くじらは虹色の音楽にのって2013』を観て
これは,どういうお話だろうか。主人公の家族は,あるとき,くじらを見るために海外旅行に出る。でも,そのスタートで,交通事故に会って,結果,家族崩壊が始まるのだ。
美里のダメージが大きく,原因不明の障害が頭に残る。夢であった,ヴァイオリニストは絶望的になる。親友も,友達の不幸が起きても,最初はその意味が理解できないので,かえって美里を苦しめる。病院に入院した美里のまわりには,実は,もっと原因不明の重い病人がいることもわかって来る。
この演劇は限りなく暗い。しかし,そこに,少し明るい場面もある。なんの病気かわからないが,とにかく子どもたちに人気のある冗談好きなオバサンの存在。それと,同じような子どもたちの病院生活をなんとか慰問しようとダンスを踊り,ショート・コントをやってみる小学生の存在だ。
この演劇に出て来る両親には,気の毒ではあるが,不注意に対する責任がある。しかし,最大の被害者,美里と,姉の事故を契機に学校生活で孤立していく理沙ふたりは,とてもあわれである。ふたりは,もがけばもがくほど,苦悩に呑みこまれていくのだ。そこには,大人の場当たりの助言も無駄である。
理沙は,最後に,病院のカベに,姉のために,くじらの大きな絵を描くのだ。そのスケールは,共同作業ゆえに巨大で,だれもがびっくりした。これは,夢も希望もなくして,この先泣いてばかり暮らすかもしれなかった,美里に少しだけ勇気,生きるための力を与えてくれた。美里に少しばかりの感動をもたらし,この演劇は終わる。
満足度★★★★
NEWSエンターテインメント12th★FESTIVAL
NEWSエンターテインメント12th★FESTIVALは,とても良い企画だった。これが,格安でありながら,三時間もある大企画だったので,一度見ても,消化しきれず,二回観ることになった。二回目は,中央の真ん中の席だったが,少し後方だった。全体として,場面にもよるがこのくらい引いてみると全体が良く見える。
これは,私の理解では,テレビ・タレント養成で一番なところが,年に一度合同で発表会をやっているものなのかもしれない。レベルもいろいろあって,あまりに幼稚なものもあったが,キレのあるダンスに終始圧倒された。短いミュージカルもあった。
きわめつけは,第二部の演劇だった。これは,すごい,傑作だったと思う。二度目は冷静になっていたので,テレビ番組を作る手法に長けている場合,こういったドラマはしごくありきたりのものだったかもしれないとは思った。それでも,最初の感動は残っていた。
話はおおむね,交通事故にあった家族の家庭崩壊的な内容だ。これを,少しずつ,わかり易く演劇で伝えていく。なかには,おもしろいキャラクターの登場人物が何人かいて,絶望的な暗さの救いとなっていた。最後が,少し不完全燃焼的だったものの,仕方ないかもしれない。