満足度★★★★
アジア的雰囲気×シェイクスピア的物語
ある島の土地の所有権を巡るいざこざをきっかけにを起こる物語を、歌や演奏や踊りをが多く盛り込んだ祝祭的な演出で描いた作品で、意外性や斬新さはないものの、引き込まれる魅力がありました。
祖父がその島の出身である兄弟が、温泉が出るということで土地を買収しにやって来るものの、他所者扱いされる中、弟がその島の長老の娘と恋に落ち、悲しい末路を辿り、その島特有の儀式が行われるというストーリーで、在日韓国人のこと想起させつつも、それだけにとどまらない、普遍性のある、家族や掟について考えさせられる内容でした。
コミカルな1幕とは対照的に、2幕はまるでシェイクスピアの悲劇作品を思わせる展開と台詞でした。
跳躍や省略のない分かり易いベタな脚本・演出で、ギャグに関しては少々くどさを感じましたが、全体的には土着的雰囲気の賑やかさがありながら、すっきりとしたモダンなセンスも感じられ、このようなタイプの作品でありがちな必要以上にガチャガチャ騒ぐ感じが無かったのが良かったです。
舞台と客席の間に段差がなく、役者達は最初から最後まで舞台上にいて、出番ではない時は舞台の両脇にあるベンチに座っていて、楽器や着替える衣装も全て舞台上に配置してあるというスタイルで、一体感のある親密な雰囲気がありました。
終盤までは役者主体で舞台美術的な要素は動きがないので、ラストの儀式のシーンでの劇場空間の高さ・奥行を活用した演出が際立っていて、幻想的な美しさと高揚感が強く印象に残りました。