いのちだいじに【全6ステージ終了しました!】 公演情報 駄目なダーウィン舎「いのちだいじに【全6ステージ終了しました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    今後に期待できる、、、
    序盤はとても面白かった。

    役者さんもとても活き活きしていた。

    ネタバレBOX

    けれど、中盤~終盤にかけては、惹きこまれなかった。

    (主宰で、脚本を担当されている山岡太郎さんに期待しているので、
    あえて厳しいことを書きます。お許しを。)

    社会的なテーマを作品に盛り込み、エンターテイメントに仕上げる手腕はとても素晴らしいと思いました。
    ですが、それが表面的なもので留まっていると感じました。それぞれのテーマがネタの域を出ていない。底が浅い。
    その為に、作品の本質的な深みは勿論、エンターテイメントとしての面白味も、同根の問題として、損ねていると思いました。
    別の言い方をすれば、様々なテーマが積み重なったり、繋がったりしないために、物語も深まらないし、解釈も開かれていかない。

    それは演出も同様です。最初、新奇な演出に興奮しましたが、手持ちのカードが出切った後は、正直飽きてしまいました。
    脚本・演出共に、中盤以降は予定調和という印象。
    新奇なものやネタを増やすことより、ひとつの問題でもよいので、本質的に何と向き合っているのか明確にして、その点を深めてほしいと感じました。


    具体的に書きます。

    まず、練馬という問題。練馬という地域も、同和などでも語られるように、歴史をたどれば様々な問題がありました。この地区の破壊計画(?)という際にも、そういう歴史を内包した問題提起が裏にあって書かれたものかと勘ぐってしまいましたが、単に埼玉に近い東京のはずれ位の差別意識を問題としてしか書かれていなかった。歴史問題を作品に盛り込めと言っている訳ではなくて、もし、そこまで視野に入れて書かれていたら、作品の深みは増し、解釈も様々な他の問題とも接合して広がっただろうと言いたいのです。例えば、神社という設定の持つ意味も大きく変わったと思います。

    また、東京と埼玉の「領土問題」を抱えた地というのも、一言そのような台詞が出てくるだけで終わってしまう。
    その点がもしもっと深く描かれていれば、後に出てくるある集団(宗教)の正義・悪の問題やテロの問題などと関連していったはずです。日本の正義と中国の正義、韓国の正義、ロシアの正義もがぶつかり合って昨今の領土問題が起っている。それは宗教対立、そこから派生するテロや戦争の問題へと繋がっていくはずです。ですが、この作品の宗教問題の描き方にでは、新興宗教が単純に悪として描かれてしまっている為に、この二つ(三つ)の問題を関連して受け取ることはできない。それによって、深みや多様な解釈が生まれてくることもない。

    更に、この作品の中心にある、少年が自分と繋がった街の景色やそこでの血の通った人間関係を大切にするという感情は、実は、この新興宗教の教祖が、昔、少年時代に見て育ち、今でも心にある練馬大根の畑の景色を大切にする気持ちと同じです。そう考えると、一概にあの新興宗教を絶対悪とだけ規定できないのではないか、、、と思えてくる。いや、思える・思えないではなくて、それ位複雑な問題なのです、宗教の正義/悪の問題は。例えば、オウム真理教の事件だって、単なるキ○ガイが起こしたものではない。ややもすると、現在の社会の価値観(資本主義の価値観)に反感を持つ人は、ちょっとしたはずみで誰でも入信してしまうかもしれない。そして、その正義の下にテロが行われる。だから、新興宗教は怖いのです。
    そして、そこに反米テロの問題も重なる。私はテロという行為は全く支持しませんが、反米テロに理由がないとは思わない。アメリカの第三世界への暴力や搾取のことを考えると、一概に全否定もできなくなる。それに、アメリカはテロへの報復のように、大量破壊兵器があるとしてイラク戦争を始めました。正義の名の下に。それも結局ウソだった、大量破壊兵器は無かった。正義とはそれほど反転していくものなのです。
    もし、そこまで描けていけば、昨今の原発の正義・悪/反原発の正義・暴力の問題とも重ねて見えててきたでしょう。(私は反原発支持者ですが、反原発運動の一部が、その声の大きさや行動から、別の暴力を生んでいる例もたくさんあると考えています。)

    新興宗教の描き方も、悪と規定したことだけが問題なのではなく、歌手志望の人がそこに深入りしていく理由が、お金や売名のことしか描かれていなかったのももったいなかった。あの団体か、またはあの団体のことを視野に入れての風刺の意味もあるのでしょうが、特定の団体への批評で終わるのでは、解釈はとても狭まる。そして、新興宗教などの最大の問題は、物理的利害(つまり金や名誉)以上に精神的な救いです。だから、弱く苦しい立場の人ほど新興宗教などに入る。もし、その点もきちんと描けていれば、もっと深い問題に広がっていったはずです。例えば、教祖が悪であったとしても、それを支持し救われる信者は悪なのか、悪事をしない新興宗教も悪なのか、新興ではない昔から存在する宗教も悪なのか、などの問題も出てくる。そういう観点からも、正義と悪の問題も単純ではなくなってくる。

    長くなりましたが、まとめると、より深いところで問題と向き合って作品を作って欲しいということです。そうすると単純な設定では話が終わらなくなる。そして、多様なテーマも、伏線として書かなくても、勝手に伏線になっていく、深みも増す。人が生きる上で抱えている問題を掘り下げれば、自然とそうなっていくと思います。

    私が社会的な問題意識が高いので、そういう部分で説明してしましたが、それは、必ずしも、大上段に構えた社会的テーマである必要はない。そうでなくてもよいので、何か中心を貫く、生きる上で抜き差しならない問題を軸に作品を構築して欲しいと思いました。


    偉そうに、すみません。

    役者さんたちが活き活きしていて良かったです。

    次回作に期待しています!

    2

    2013/05/11 00:41

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  • コメント、ありがとうございます。
    もしかして、先日『くりかえし無限遠点』終演後に、お会いした方ですかね?私はミドル英二さんと一緒にいた者です。その際は、きちんとした自己紹介もせずに失礼いたしました。
    こちらこそ若輩者なのに、偉そうに厳しいことばかり書いて、申し訳ありません。
    次回作も期待しています!頑張ってください!!!

    2013/05/19 21:26

    たんげ五ぜん様

    この度はご来場、誠にありがとうございました!
    厳しくも嬉しいお言葉、本当にありがとうございます。
    山岡共々真摯に受け止め、次の創作へ繋げられるよう尽力してまいります。

    まだまだ若輩者な我々ですが、山岡始め駄目なダーウィン舎を、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
    次回作の詳細決まりましたら、また是非お声かけさせて下さい!

    制作

    2013/05/18 16:28

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