ポジション 公演情報 ナカゴー「ポジション」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    怖さの先の深さ
    別にホラーのテイストを醸し出すようなあからさまな手法が
    とられているわけではないのですが、
    終わってみれば、
    物語の顛末よりもなによりも、
    描かれているもののコアが底知れず怖い。

    そして、怖さの先には、
    ぞくっとくるような
    人が抱きうる想いのリアリティがあって・・・。
    ひたすら見入ってしまいました。


    ネタバレBOX

    最初にト書きのように語られる
    登場人物や前提となるシチュエーションが
    観る側をしたたかに物語に導いていきます。

    作り手一流の語り口で描かれる
    元生徒と結婚した先生の
    他の生徒との浮気がばれた修羅場に一気に取り込まれる。
    その空気だけでも、その空気だけでもおもしろいのですが、
    でも、それは描かれるものの入口にすぎなくて・・・。

    むしろ、そこで収まった態から、
    揺り戻しのように浮かび上がってくる、
    それぞれのロールが互いに抱く
    染みつき消えることのない想いの在り様に
    じわじわと捉われてしまう。

    「こういう女」を演じる役者が描き出す
    滲み出してくるような想いの粘度が実に秀逸。
    また、それを受ける側の、
    表層に作られたかりそめの純真さにも、
    垣間見せる想いの禍々しさにも、しなやかな実存感があって。
    夫にとって執拗に繰り返されるという
    「30人31脚」の記憶のエピソードなども
    タイトルに表された
    女性の想いを端的に炙り出していてうまいなぁと思う。

    その間に入る夫の日和見さにも、
    女性の揺らぎを更に際立たせる精度があり、
    狂言回し的なポジションの女性の
    すっと中に取り込まれていく感じが、
    物語にさらなる厚みを作り出して・・・。

    ポップコーン一袋で描き出される、
    箍が外れ、抑制を失った女性の想いの溢れる姿に目を瞠る。
    役者達の演技の秀逸が、
    女性のボーダーでの揺らぎをしっかりと描き出しているから、
    女性のありようが、突飛なものとならず、
    その、所作や表情のひとつずつが、
    理とリアリティを持った狂気の溢れ方として観る側を震撼させて。
    ふた袋の黒いごみ袋が想起させるシーンが(一袋でないのうまい)、
    現実感を醸し、観る側をさらに取り込んでいく。

    ラストの夫のとりつかれ感も、
    現実世界からの踏み出しも、
    そこまでに組みあがった世界にしなやかに担保されて。

    観終わって、恐怖にどこか心を凍らせつつ、
    その先に作りこまれた、
    人の想いの在り様に深く捉われ、
    そちらの印象がより残る。

    従前の作品より、
    刹那の表現の肌触りは軽くなったようにも感じたのですが、
    でも、それは決して作品に内包されるものが薄くなったということではなく、
    新たなベクトルの洗練での賜物なのだと思う。
    作り手の、作劇の切れ味が
    従前にも増して、さらに研がれたようにも感じたことでした。



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    2013/05/05 07:40

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