愛とその他 公演情報 劇団東京乾電池「愛とその他」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    頗る知的
     土の上には床があり 床の上には畳がある 畳の上にあるのが座布団
    その上にあるのが らくと言う らくの上には何もないのでしょうか
    どうぞ お敷きなさいと言われて らくの上に 座る 云々という歌詞が 開演前には流されていて、歌詞の内容は無論、これから始まる劇の内容を暗示している。

    ネタバレBOX

     幕開けに女が1人登場する。電動式鉛筆削りと鉛筆、座布団を1枚持っている。女は、鉛筆を削り続けている。次の女が登場、互いに座布団の位置を調整し合う。この行為によって、通常演劇で用いられる“間”を時間軸に沿わずに寧ろ、空間軸に焦点を当てる方向に転移させている。3人目の女が登場、ノートを持っている。この家の主婦の妹である。彼女は、家計簿をつけ、野良猫の観察をし、面倒を看ている。3人は、最初空間に於ける“間”の問題に関わっているが、次に如何にも日本的なKY(空気を読め)的な情況を演じる。それが煮詰りそうになると、やがて1人が口を開き、会話が始まる。3人目に登場した女は、仕事が決まる迄の間、姉夫婦の家に厄介になっているのである。徐々に3人の関係が明らかになって行くが、彼女達は、幼馴染で妹が引っ越して以来会っていなかったので、あてど無い旅に出た{女1、女2(登場順)}序に立ち寄ったのであった。
     次々に女客が訪れる。隣家の女は、外国土産のチョコレートを持参、姉にお茶を勧められて飲んで行くことにする。その後、姉のアルバイト先のレジ仲間が3人やってくる。彼女達も茶を振る舞われ、井戸端会議を始めるが、いつしか話題は町内会紛糾問題に移って行く。町内会の勢力争いが嵩じて終には、対抗勢力同志がスパイを送り込む泥試合になっているのである。どちらにも属さないで来たレジ仲間ではあるが、近所づきあいの関係で、4人のうち2人が、会派の異なるグループに属すことになった。だが、レジ仲間の間では不問に付すことにする。ただ、町の空気としては、疑心暗鬼が渦巻いているのである。無論、ここでは、この井戸端会議を通して、日本という「国」が持つ、ムラ政治型の問題を炙り出している。
     順ぐりに深さを増してゆく蟻地獄のような舞台展開は、知的で諧謔に満ち面白い。場ハケも設定が見事。また、姉タカコを3人の女優が演じるのは、主婦の家庭に於けるSE性(System Engineer)を示しているととると面白い解釈が可能だろう。
     閑話休題 大きな芋虫が登場するシーンも不条理演劇を通って来た、劇団の歴史的、時代的状況を反映するとともに、箍外しをしつつ、それら不条理を笑うようで興味深い。或いは自嘲を込めた苦い笑いもあるかも知れないが。
     終盤、終にスパイ問題が嵩じて、女同志の喧嘩になるが、クッキーが出来上がったことで一件落着。この辺り、女性が絶えずDVなどの物理的暴力に怯えている情況の中での、力に対する弱者の対抗・判断を示唆し、落とし所を笑いと本質に於いて提示、リアルな生き様を示して痛烈である。

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    2013/05/04 11:55

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