大きなトランクの中の箱 公演情報 庭劇団ペニノ「大きなトランクの中の箱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ちょっと触れたくないけれど
    終わってみれば、美術を観るだけでも
    木戸銭の元を取ったような気分ではあるのですが、
    無論それらは表現の踏み台に過ぎず、
    描き出されていく男性にとっての成長の俯瞰と
    あからさまでちょっと気恥ずかしい共振感に、
    苦笑しつつ、でもガッツリ捉えられてしまいました。

    ネタバレBOX

    以前にはこぶねで観た世界の集大成のような作品でもあり、
    なにか、OSが一気に新しいものに変わった
    パソコンだからこそ描きえた
    男性が繫がれたものの
    より細微な表現にも思えたり。

    男性にとっての父親への畏怖や憧憬、
    超えられない感というか・・・。
    また、少年のころの純粋な興味のなれの果てや
    悶々とした劣情の感覚の行き場のなさ。
    さらには若さの気恥ずかしさから
    老いることで生まれる衰えやずるさ・・、
    それらが、どこか戯画的に、
    一方で隠したり否定したりしたい部分をも含めて
    舞台上に展開していきます。
    ある意味いい歳こいた男性にとっての黒歴史的なものを具象化され、
    観る側がかぶせていたベールを剥ぎ取り晒すような部分もあるわけで、
    居心地の悪さもがっつり感じつつ、
    そこまでをしっかりと舞台に乗せる作り手の
    アーティストとしての貫きにぞくっときたりもして。

    好きか嫌いかといわれると
    実はきわめて微妙で、
    一言で表現できないようなデリケートな感情も湧いてくるのですが、
    自然体では決して触れたり直視したりすることなく、
    寧ろおくびにも出さないように抗い、
    なかったことにしてしまうものを
    衒いもなく観る側に突きつける、
    観る側にその評価を迷わせるような
    なにかを踏みこえたリアリズムこそが、
    この作品の秀逸さでもあるように思えるのです。

    某マンションの一室に設えられた世界に比べて、
    作品が内包しうるものも圧倒的に大きいわけで、
    カノンに導き出される内なるものや、
    生きることへの俯瞰と繰り返しが
    概念としてではなく、溢れるように伝わってきたことでした。



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    2013/04/29 07:45

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