天使は瞳を閉じて 公演情報 ソラトビヨリst.「天使は瞳を閉じて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人間って哀しいね
    第三舞台・鴻上尚史の脚本を中山英樹さんが演出・編集というソラトビヨリ版。
    ちなみに私は第三舞台版を観ていない。
    繰り返される天使の報告書の文章が
    舞台正面のスクリーンに映し出される演出が良かった。
    人間の愚かさと天使の優しさが視覚にも訴えて来て効果的。
    ダンスシーンも大健闘。
    マスターのたたずまいが魅力的だ。

    ネタバレBOX

    舞台正面に3枚の布のスクリーン、真ん中は四角い大きな布、
    左右は細長い長方形で、そこに字幕が流れる。
    天使が神様に(神様はもう大分前にいなくなってしまったが)報告書を書く
    その文章が映し出される。

    天使の仕事は人間達を見守ること、決して手を出して助けたりしてはならない。
    だが今や天使の担当区域に人間はおらず、タヌキの観察などを報告する日々だった。
    ある日、女天使が生き残った人間がいる区域を発見、男天使を無理やり誘って
    そこへ舞いおりると、町は膜(壁?)に覆われて放射能や宇宙線から守られていた。
    しかしそれを知らない人間たちは、膜の向こうの世界へ出たいと思っている。
    女天使は幸福そうな人間たちの姿を見て「人間になりたい!」と宣言し、
    たまたま降り立ったその店でバイトを始める。

    そしていつか、手を出さないはずの天使は、
    人々の肩にそっと手を置き、手と手を重ねさせて
    思うようにならない人の心をつないでみたりする。
    それでも、幸福そうだった人間たちの心と暮らしは、少しずつ壊れて行く…。

    「町は幸福に満ちている
     僕は書くことがなくて困っている
     明日にでもあの懐かしい受け持ち区域に戻ろうと思う…」
    どんな哀しい情けない人間達を見ても、このフレーズで報告書を終える
    男天使の心情が切ない。
    演じる二川剛久さんの、話し方も仕草も優しく繊細で
    他の登場人物がテンション高い中で切なさが際立つ。

    もう一人、マスター役の中山英樹さんのたたずまいに味わいがあった。
    「マスター、ビール!」と言われた時の返事に、思いやりがあふれている。

    「コーマ・エンジェル」という謎のドラッグや、背中に羽が生える奇病など
    滅び行く人間たちに原点や立ち止まるきっかけを示唆するアイテムが効いている。
    メディアによって方向性を定められ、踊らされる世界の危険性は現代も同じだ。
    人間の成長と同時に、メディアや社会の成熟についても考えさせる。
    鴻上流の笑いやダンスシーンも多くエンタメ色が強いが
    ”進化にまつわる会話”など深いところを突いて来るので
    その行ったり来たりがストーリーの道幅を広げて魅力的な作品。

    舞台は全体にハイテンションだが、”エンタメとシリアス”の振れ幅に合わせて
    テンションも台詞ももっと細かく変化したら、さらに彫りが深くなったように思う。

    死んでしまった”羽根の生えた人間”とは、進化なのか退化なのか?
    ”退化して天使になった”と思いたいけど…。

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    2013/04/28 09:25

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