エレノア 公演情報 サスペンデッズ「エレノア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    死者の言葉
    ベタなキャラとエピソードに見えて、実は素晴らしく繊細でリアルな作り。
    それは台詞が活き活きと、まるで鍛えた腹筋のように躍動するからだ。
    “間違った方を選択”しながら生きる孤独な人々が愛おしく、切ない。
    早船さんの“死者の言葉”には、いつも泣いちゃうんだなぁ。

    ネタバレBOX

    舞台正面の大きな窓から川を見下ろすような、町の不動産屋が舞台。
    新婚でうきうきしている社長の克彦(佐野陽一)、
    綺麗で行き届いたその妻美幸(ともさと衣)、
    おちゃらけ従業員の谷迫(佐藤銀平)、
    アルバイトの和泉(山下真琴)。

    そこへ加わるのが、同棲を解消して転がりこんできた社長の姉夕子(野々村のん)、
    それに美幸の昔の男(伊藤聡)、
    そして謎の老人(一色涼太)…。

    登場人物がみなくっきりと描かれていて分かりやすいのに
    人となりに奥行きがあってとても魅力的。
    その人達の説得力ありまくりの台詞に客席から何度も笑いが起こる。

    社長の姉夕子を演じた野々村のんさん、
    最後の父親からの電話、あれは彼女の幻想だったのかもしれないが
    しみじみと温かく、泣けて仕方なかった。
    このお姉さんのキャラ、魅力的で本当に素敵だ。

    おちゃらけ社員谷迫を演じた佐藤銀平さん、
    中途半端でなくこういう人物を演じる、隙のないなりきりぶりが素晴らしい。
    いい加減なようで、優しいところもある、でも総合的にはダメ社員(笑)を
    誇張しているのにリアルに見せるからめちゃめちゃ可笑しい。

    女房に逃げられる不動産屋の社長役、佐野陽一さん
    逃げられてからのめそめそしてるところが超うまくて
    別にオーバーな芝居でもないのに思わず笑ってしまう。

    谷迫にくっついて事務所に居ついた(?)老人が秀逸。
    ずーっと無言だったこの男が、ラスト思いがけず明快に語るところが良い。
    一色涼太さんの口跡が実に魅力的で、長台詞にもかかわらずぐっとひきこまれる。
    作品の根幹をなす重要な台詞を体現して素晴らしい。
    たたずまいの雄弁さを見せつけるような、
    ただ立っているだけで人生がじわっと染み出してくる芝居。
    この人の他の舞台も観てみたいと思った。

    妻役のともさと衣さんと、昔の男伊藤総さんが踊る場面
    あそこは二人の世界に入り込んで周囲が見えない“困った二人”を
    もっと色濃く出して欲しかった。
    テレビドラマ「最高の離婚」のエンディングで瑛太ら4人が妖艶なダンスをしたが
    ああいうエグさが前面に出たら、もっと効果的で面白いと思う。
    ともさとさん美人だし成功すれば効果絶大なはず。

    衣装が変わるのも最近では珍しいが、やはり丁寧だし時間の流れが明確になる。
    衣装センスもよく、BGMともあいまって演出の細やかさ、上手さを感じた。
    ビートルズの「エリナー・リグビー」では、人の孤独な生涯が歌われるが
    “間違った方を選んだ人も、きっと誰かの心を支えている”という
    早船さんの優しいメッセージを感じる。
    今日流れた涙があたたかいのはそのためだと思う。

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    2013/04/27 05:51

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