泣き方を忘れた老人は博物館でミルとフィーユの夢をみる(爆撃の音を聞きながら) 公演情報 おぼんろ「泣き方を忘れた老人は博物館でミルとフィーユの夢をみる(爆撃の音を聞きながら)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台から温度の高い熱風を送り込むような公演
    「オレたちは、こうなりたい!」と、いつも熱っぽく語る劇団だ。
    しかし、それが嫌みにはならない。
    むしろ「ガンバレ!」と応援したくなる。

    上演時間40分ぐらい。
    料金:投げ銭。

    ネタバレBOX

    今回は、少ないが(それでも日曜日は4回公演!)、ロングランで公演を打ったとしても、毎回毎回、同じ熱いテンションで、「オレたちの舞台! 観てくれ!」と舞台から温度の高い熱風を送り込むような公演を繰り広げる(実際、口に出して言うし・笑)。

    そういう劇団は、そうあるものではない。惰性のように上演を続けているような、大手劇団に爪の垢を煎じて飲ませたいほどの熱意だ。

    たぶん、小劇場の公演に行く観客の多くは、そういうのが好きなんだろうと思う。
    いや、小劇場に限らず、演劇、音楽に限らず、そういうものは観客に伝わるし、それは大切だと思う。

    単なる観客の1人が言うことではないが、「なんでこの、おぼんろという劇団は、観客をも熱くさせ、虜にしてしまうのだろうか」(こりっちの「観てきた」とかを読んで)と思った、他の劇団関係者は、一度観に行くといいと思う。
    確かに、いろいろと稚拙なところはあるとは思うが(失礼!)、得るところ、ヒントはあるのではないかと思うのだ。
    つまり、おぼんろの役者たちだけでなく、そこに集う観客の表情を見て感じることはあると思う。
    そこには、「お手並み拝見」と腕組みして見るなんていう態度では発見できない何かがあると思うのだ。

    路上の一人芝居からスタートし、今までも少人数の観客を前に、とにかく公演回数を重ねながら動員数を増やしてきた劇団であり、観客への接し方がとにかくうまいのだ。

    例えば、観客が座る席の間を役者が駆け回るというスタイルの演劇なのだが、「いろんな場所をキョロキョロ観ると、近所の人と目が合ったりして日本人的にはキマリが悪いと思うので、まず最初に左右前後の人たちと挨拶をしておこう」なんて言う台詞とそのタイミングや、観客に何かを振ったとしても、それを瞬時に自分たちに持っていくタイミングのうまさなど、たぶん同じことを別の劇団でやったとしても、この感じは出ないだろうと思う。
    それはもう、「この! 人たらしっ!」(笑)って言っていいほどだ。

    池袋の東京芸術劇場・シアターイースト脇のアトリエイーストという空間で、「おぼんろ博物館特別展示」と題して、未来の世界にある、おぼんろ博物館という設定で、展示と上演を行った。

    タイトルどおりの内容で、どうやら未来の日本は、東西に分かれて内戦中らしく、かつておぼんろ博物館と呼ばれた廃墟に、避難している人々(観客)がいる。その中に一人の老人が現れ、「おぼんろ」という劇団を一度でいいから観たかった、と言い、末原拓馬を降霊する。

    そんなストーリー。

    まるで詩のような台詞が、いい感じにアングラ感を醸し出す。

    正直、最後の展開(サイボーグ云々)は少々説明的ずきて、窓を開けて海の向こうにある船に行く、というそこまでの、幻想的な展開を壊してしまう。
    つまり、劇中劇(劇中劇中劇?)のおぼんろの演劇のほうはあくまで幻想的で、そして、現代(未来なんだけど)に戻ったときにはその感じで、という切り分けなのだろうが、それでもラストは、おぼんろの演劇を引っ張ったままの、幻想的な雰囲気で終わってほしかったと思うのだ。
    それが、唯一残った、さひがしジュンペイさんが引き継いでいくという、さらに強いラストに結びついたように思う。
    ただ、それは好みの問題で、劇団の未来を示すようなラストも、ちょっといい。

    老人役のさひがしジュンペイさんが、いい感じだった。

    ※星の数は難しい。公演自体は3つなのだが、今回の劇団おぼんろの存在感は4つだったからだ。そんなことどうでもいいとは思うけど、悩んだ。結果、3.5かな(笑)。

    0

    2013/04/08 07:53

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大