従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン.... 公演情報 Théâtre des Annales「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン....」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい演出。
    素晴らしい演出だった。演技や脚本もよかった。

    ネタバレBOX

    正直に言うと、終盤になるまで劇に入り込めずにいた。

    それは、山崎彬さん演じるミヒャエルの役の感じが本当に嫌だったからだ。
    単に好き嫌いの問題もあるのかもしれないが、ああいう役(下卑た下ネタをわめき散らす感じ)を登場させる芝居は、ただのニギヤカシだけでああいう役が存在する場合が多い。内容の無さを埋め合わすのに、下ネタなどで面白おかしくしようみたいなノリが大嫌いな私としては、「この芝居もそういうやつね」と拒絶反応に近いものが自分に生じてしまった。
    だが、観ていくと、劇全体ではそういう感じでもない。ミヒャエルだけなのだ。おかしいなと思いながら、それでもちょっと引いて観ていた。
    そして、最後で、そのミヒャエルの品性のなさがマックスに到達し、ミヒャエルを見る私の中に、嫌悪・怒りが湧きあがってきた時、「やられた」と思った。
    もう私は、劇の中に入り込んだいたのだ、と。

    しかも、ずっと入り込めなかった部分こそが、敢えて演出されたものだったとは。こりゃあ、一本とられた。
    入り込めなかった段階から、作者の術中に、既にハマっていたということだ。

    そのシーンで、主人公ウィトゲンシュタインは、自分をホモと罵り、そして自分の愛してやまない友・ピンセント(一人二役で、この役も山崎彬さんが演じている)の死までも嘲っているミヒャエルを、なんと最後に抱擁する。それまでは、入れ替わり立ち替わりしていたピンセントとミヒャエルが、そのシーンでピタッと重なる。もちろん、直ぐに「きもちわり~な」とミヒャエルに戻るのだが。

    いや~、秀逸。
    脚本・演技・演出のすべてがあのシーンで焦点を結ぶ。本当に素晴らしい。

    それは、山崎彬さんの演技力も大きいのだと思う。うん、凄い。本気で観ててムカつきましたからね(笑)


    あと、演出面では、完全な闇の中での戦闘のシーンも素晴らしかった。色々、想像させられた。そして、その完全な闇の中から発せられる銃声に驚愕。そして、闇から明ける場面もよかった。

    ランプを使った光の使い方も素晴らしい。

    細かい演出では、序盤、メインで演技が行われているところの外で、別の役者がノイズを出していたりなど、敢えて気を散らせる部分も面白かった。


    などなど、本当に一本とられたという感じ。

    役者さん達の演技も素晴らしかった。

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    2013/04/05 23:56

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