シュワロヴィッツの魔法使い 公演情報 メガバックスコレクション「シュワロヴィッツの魔法使い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    キーワードは「希望」
    大人のファンタジーだけどそこはメガバックス、
    「そうだったのか!」という予想外の展開は今回も健在。
    魔法使いのキャラクターが素晴らしく魅力的で
    どこか映画のような雰囲気を漂わせる舞台だった。
    それにしてもこの魔法使い、泣かせるじゃないの。

    ネタバレBOX

    横長のアルシェの舞台はいつもよりシンプルな感じ。
    上手どんつきに小屋のような建物があって、中からやわらかい灯りがもれている。
    小屋の入口前には素朴な木のテーブル、
    舞台中央には蔦のはう壁がある。
    ちょっと「ハリーポッター」のような雰囲気のBGMがドラマチック。

    明転すると中央に立つ黒い服の男が語り始める…。
    魔法使いには何でも出来る魔法使いもいれば、
    たったひとつしか魔法を使えない者もいる。
    ある魔法使いは、たったひとつ、たった1回しか魔法を使うことが出来ない。
    そしてそれを260年使えずにいた。
    いつどこで誰のために使えば良いのか、魔法使いは長く苦悩していた。
    昔から人間と魔法使いは一緒に生活していたのに
    ある日、禍をもたらしたのは魔法使いのせいだと言われ、彼は囚われの身となる。
    教会の地下室に閉じ込められて9年目の物語が始まる…。

    “万能でない魔法使い”という設定が人に近しく、親近感をいだかせる。
    船が難破してこの島に流れ着いた3人の男たちと一緒に
    観ている私たちも謎めいた島に分け入って行く気分。
    島民の不思議な行動、
    「俺をここから出してくれたらもっと秘密を教えてやる」と囁く魔法使い、
    メガバックスらしく、終盤でそれまでの認識をひっくり返す展開が鮮やかだ。

    魔法使いのウィズを演じた星祐樹さん、冒頭から素晴らしい声に魅了された。
    声優としての鍛え方なのだろうか、説明的になりがちなところを
    その力強く自在な声でファンタジーの世界へ一気に惹き込む。
    語り部として、また人心を操るような魔法使いとしてとても魅力的だった。

    流れ着いた男ロイ役の新行内啓太さん、思慮深く聡明ながら
    船に乗る男らしさも漂わせてちょっと新鮮な印象を受けた。

    トト役の下田修平さん、まるで素のような(すみません)
    チャラいけれど純粋なところもある男を生き生きと演じて上手い。

    気になったのは魔法使いが幽閉されている鉄格子がぐらぐらしてたこと。
    なんだかあれではすぐに脱出できそうで、
    「俺をここから出せ」と迫る説得力に欠けると思う。

    終盤舞台を3つのブロックに分けて、同時進行で悩む人々を描くところ
    ちょっとテンポが落ちて緊張が途切れた印象を受けた。
    もう少し選択を迫られる切羽詰まった感じがあった方が
    その後のどんでん返しになだれ込む勢いがつくような気がする。

    衣装や小物(飲み物のカップなど)が素敵でおとぎ話感満載。
    メガバックスの“外注無し”の総手作り舞台が心地よい。
    当日パンフにも書いてある通り「希望」をテーマにしているというこの作品、
    魔法使いの深い悩みと、最後に出したその答えに
    ひとすじの希望が差し込むような舞台だった。

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    2013/03/31 04:54

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