ミス・サイゴン 公演情報 東宝「ミス・サイゴン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    劇団四季よりいいじゃん!
    劇団四季とは,なにか。浅利慶太の父は,築地小劇場の創立メンバーだった。フランス語で,Quatre saisonsから,四季となっている。日生劇場から手を引き,演劇の東京一極集中をさけるべく,全国各地での公演をめざす。浅利慶太は,新劇関係者のような,「愚かな観客にまで観てもらわないくてもいい」と思わないところがあった。浅利は,『ウェストサイド物語』を,ブロードウェイから取り入れた。そのまま招いたのだ。有名スターに依存する東宝とはちがい,劇団四季は,アンサンブル中心のものだった。劇団四季の大ヒットは,『キャッツ』である。劇団内には,スターはできにくいシステム。浅利慶太は,カリスマ性を持っているので,後継者問題は難しい。

    観客動員数というのを比較してみるとき,演劇の種類が問題になる。劇団四季は,年間観客動員数で,松竹・東宝をぬいて首位になる。松竹には,歌舞伎もあれば,新派,松竹新喜劇もあった。また,東宝には,女優芝居があり,演劇&歌謡ショーが含まれていた。東宝には,『レ・ミゼラブル』があったものの,ほとんどが,ブロードウェイ・ミュージカルだった劇団四季は,松竹・東宝とは少し異質であった。松竹・東宝には,団体客が目立つ。商業演劇としては,団体客で対応した方が成功だ。でも,劇団四季は,団体客よりは一般客がチケットを個々に買うことをめざし,作品に集中させる。ディズニー・カンパニーは,ブロードウェイにも進出している。『美女と野獣』『ライオン・キング』である。劇団四季は,ミュージカル分野でびっくりするほど貢献している。

    でも,東宝だっていいものがあるよ・・・

    『ミス・サイゴン』は,どういうミュージカルだろうか。物語は,オペラで同様のものがあり,舞台を「ベトナム戦争」に移したものであると良くいわれる。

    『ミス・サイゴン』は,『レ・ミゼラブル』とはちがって,現代史のある部分を,観るひとに伝えてくれるものだ。『ミス・サイゴン』を観ていると,確かに,アメリカ兵がアジアに来て,ある戦争をしていたという事実が実感としてわかる。

    キムという娘は,思いのほか一アメリカ兵に恋をしてしまう。その子どもを育て,もう一度アメリカ兵に再会することを夢見ている。アメリカ兵にとっても,キムのことは忘れられない思い出である。ミュージカルでは,アメリカ兵は,任務であるので,強制的に母国に帰還せざるを得ないので,確かに悲恋ともいえる。

    実際,キムが,アメリカ兵の妻と再会し,ショックを受け,子どもを預けて,自殺する流れは,たいへん気の毒である。

    この作品から,何を学ぶか,どういう印象を持つか,ひとそれぞれだ。アメリカ兵の身勝手を責める意見も多い。また,アメリカ兵の行動に翻弄されたキムは,愚かで,そのようなアジア人蔑視のミュージカルに反感もあって当然だろう。

    ただ,そういったことを前提としても,「激しく生きている」キムがそこにいる。何度も観る場合,きっと,転落していくことがわかっていても,また観てしまうのだろう。

    作品のオープニングは,場末の売春宿。そこで,ほとんど下着同然の若い女性たちがダンスし,それを,狂言まわし役が見ている。舞台が進むと,ベトナム戦争の雰囲気をあまりにリアルにイメージする,国旗,兵士の行進などがあざやかに広がる。ヘリコプターも印象的だった。

    『ミス・サイゴン』とか,『レ・ミゼラブル』というものは,ほかのものに比べ,音楽性から何から抜群の完成度を持つものであろうから,一度は観て圧倒されるのも大事だろう。

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    2013/03/28 20:46

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