ハルメリ2013 公演情報 世の中と演劇するオフィスプロジェクトM「ハルメリ2013」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現代の状況と向き合う意志
    現代の、特に若者の一部に特徴的に存在する心理状況を見事に捉え、デフォルメを加えることで、ドラマに仕上げている。

    この時代と向き合おうとするその意志が素晴らしかった。

    演出もとっても現代的で面白い。

    ネタバレBOX

    現代の若者の一部が持っている特徴(競争しない。自己肯定。相手にも優しく、自分にも優しく、、、、など)をデフォルメし「ハルメリ」という現象として描いていく。
    まるで、宗教か、病の一種であるかのように。

    それは、若者の文化から始まって、老若男女を巻き込んでブームは広がっていく。少し前の(今でも流行っている?)スピリチュアルブームなどにも重なって見えなくもない。
    若者文化へ批評でありながら、今日の社会全体に広がっている普遍的なムードへの批評にもなっている。

    批評と言っても、単にそのような在り方を上から目線で批判している訳でもない。それは渦中の問題であり、そう簡単に相対化できるようなものではない。だからやっかいなのだ「ハルメリ」は。
    事実、何人かの登場人物が「ハルメリ」を相対化しようと試みるも、その相対化さえも、見事に「ハルメリ」現象に呑み込まれていく。

    また、「競争しない」という姿勢が、「でしゃばるもの、突出するもの」を否定する、攻撃するというところにまで至る。
    共産主義や、一部の新興宗教が、理想や理念と真逆の末路を辿ったものとも重なって見えなくもない。また、現代社会のありようそのもののようにも見える。

    そんな中で、高橋ユズルという登場人物がとても興味深い。
    「ハルメリ」現象への批判をするコメンテーターであったにもかかわらず、
    「お前の在り方こそハルメリだ」というような問い詰めをされ、自殺してしまう。
    そして、自殺した後、本物の高橋ユズル(の霊)なのか、高橋ユズルを語る別の人物なのかわからない者(それ自体がハルメリ的)が、ツイッター上に現れ、
    まさに原義的な意味での「ハルメリ」の思想のようなものを語る。
    そして、一度は、高橋ユズルこそが真の「ハルメリ」を語るものだということになりかけるも、その現象さえも、アイドル・梅津りん子の策略か本音かわからない行動で相対化されてしまう。

    今のマスメディアの、、、ある人物を持ち上げたと思ったら、急にてのひらを返して徹底的に攻撃するなどの現象をよく表している。


    それを群像劇で描いているので、その「マス」の問題がダイレクトに伝わってくる。ツイッターの画面が舞台と連動しているなども、その感じをより助長する。

    そういう意味でも、この脚本が描いている世界を、見事に演出もできているのだ。


    と、一方で大絶賛する自分もいるが、もう反面、評価に迷う自分もいる。
    劇全体としては、そのような凄い脚本・演出だなと思う反面、
    役者の演技が全く心に迫ってこないのだ。

    でも、それは、突出した人間なんていらないという「ハルメリ」世界を描いているのだから当然だ、とも解釈できる。
    群像劇であり、断片的であり、ある特定の人物の心理に深く入っていくような描き方はされていないし、その必要もないのだが、、、、

    何か身体的なものが抜け落ちている気がしないでもない、、、、

    でも、それこそが、「ハルメリ」の世界なのだと考えると、納得せざるを得ない。

    いずれにせよ、凄い作品。

    0

    2013/03/28 00:00

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大