ねぼすけさん 公演情報 バジリコFバジオ「ねぼすけさん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    家が破産しても,みんなでカラオケ大会できるおバカ集団
    台風が来ている中,『ねぼすけさん』をサンモールスタジオ(新宿)で観た。この作品は,とても良くできている。主人公の,キナコは,実は,もともと未来から来た旦那と,その事実を知らずに結婚していた。だから,未来から来た彼が,あれこれコントロール(超能力で)することによって,キナコのまわりでは,かなり不思議な現象が,日々起きるのである。

    作・演出の佐々木充郭は,的確に,昭和30年代の世界を再現していた。あの時代には,空き巣は入り放題だった。押し売りは,どこか哀愁のあるものだった。キナコのまわりには,ほかにも,個性的なキャラクターが光る。息子の担任の先生は,少しヒステリーだ。彼女は,キナコの家族のようにノー天気で生きていけるひとたちがどうしても理解できないのだ。

    劇団14歳では,『山に登る』で,佐々木充郭は演出をしている。非常用の缶詰が,どうしてもあかない場面で,たいへん大げさに振る舞うのだ。今回の『ねぼすけさん』の出演者は,そのほとんどが,オーバー・アクションの連続。たとえば,額をテーブルに本気でぶつけるなど,ケガでもしそうなテンションだった。でも,こればかりというわけでもなく,劇は,きわめてまじめに展開。

    『ねぼすけさん』は,第17回劇作家協会新人戯曲賞入選作である。多くの審査員をうならせた理由には,一度だけさらっと観ると気がつかないようなトリックがあるはずだ。過去の有名文芸作品やら,名映画から,ちょこちょこ聞いたことのあるような名前が浮かんでは,消えていく。やはり,『ねぼすけさん』は,相当手のこんだつくりになっているようだ。

    この劇団は,人形を使う。このために,どのようにあやつり人形が出てきたり,あるいは,被りものの猫が演じるのか,ずっと気になっていた。ほかの作品はまだ一度も観たことがないが,少なくとも『ねぼすけさん』出演の人形猫は,どこか親近感のある楽しい存在だった。人形猫と,被り物猫が会話していると,アルツハイマー気味の老人が,なぜか会話に参加している(SF劇らしい)。

    さて,『ねぼすけさん』を観おわって何を感じるか。ドタバタ会話の中にある,人間の世界など,きっと破滅に向かっている・・・という深みのある意見に共感するのか。あるいは,何度もくりかえされる,キナコ家族は,家が破産しても,みんなでカラオケ大会できるおバカ集団で,そこがまた魅力だというところに尽きるのだろうか。

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    2013/03/27 20:55

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