「ワーニャおじさん」「かもめ」「三人姉妹」「櫻の園」 公演情報 劇団だるま座「「ワーニャおじさん」「かもめ」「三人姉妹」「櫻の園」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    このチェーホフは,良かったと思う。
    『かもめ』では,トレープレフ(コースチャ)は,才能があったが,俗物の母にはバカにされるわ,母の愛人トリゴーリンに恋人ニーナを横取りされる。結局は,ニーナを忘れられず自殺してしまう。チェーホフの世界は,気分・余韻の劇だから,明確に自殺のことは表現されていない。ただ,暗示されているに過ぎない。

    『三人姉妹』のイリーナは,劇中ひどく変化していく。最初は,夢を持ち労働にも意欲的である。しかし,次第に,現実のつまらなさ,単調さに苦しむ。最後は,愛のない結婚をしても良いと考えるものの,その相手トゥーゼンバフは自殺まがいの決闘で自分から去ってしまう。それでも,生きていくのだと・・・とちかう。軍医の「同じことさ」という虚無的なことばが,ずっと心に残っていく。

    『ワーニャ伯父さん』は,ちょっと気の毒な人間だ。尊敬しきった教授閣下は,その実たいしたものでないと気が付くが,ときすでに遅いのだ。ソーニャも,無謀な恋に狂い,何もできない。ふたりは,深く絶望し,ただ耐えることのみだ。とはいえ,意外と多くの人間にとっては,人生で勝者になれないことばかりだ。だから,演劇がリアルになる。

    『桜の園』は,気分の演劇であるチェーホフの傑作だと思う。ロパーヒンは,さくらんぼ畑に斧を入れることしか頭にない。この『桜の園』転売の始末で,もともと孤児の境遇のシャルロッタは,またまた逆境に転落していく。軽妙に手品などやっている場合ではないのだ。どこかおかしみがあるが,その中に,しんみり人生の悲哀を感じさせてくれる。

    四作品を通しで,上演してくれたことでいろいろな発見があった。また,猥雑で狭い劇場の中,観客も演者と同化していく。このチェーホフは,良かったと思う。

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    2013/03/26 23:04

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