獣のための倫理学 公演情報 十七戦地「獣のための倫理学」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    視点を変えることによって・・・
    観劇直後と、しばらく経ってからの印象が変わった作品である。

    ネタバレBOX

    説明に、物語の大まかな展開が綴られているので完全な推理劇として観ることはできない。特に「ロール・プレイ・メソッド」の参加者たちによって提示される資料によって“桐原は犯人ではなかったのではないか”という方向への持っていき方は、皆さん仰るように出来過ぎ、無理矢理の感を抱かせる。それは大摘村通信(?)だったり桐原が村人たちと写った写真から導き出される方向性、結論に対して。また、ラストにつれて徐々に明らかになるが、35年も前に起こった事件(終わった事件)をワークショップにより検証しようとする、その参加者たちはよほどその種のテーマに関心がある者、又は何らかのかたちで事件に関係のある人物であろう事は容易に想像できる。私は観劇の冒頭、(説明書きをすっかり忘れていたので)半分推理劇の展開を期待し観客もそこに参加するようなワクワク感を感じたので、観終わった直後はしっくりこない印象のほうが強かった。ただその後、この作品の肝は何かと時折思い出してつらつら考え多少考えが変わってきた。脚本の柳井氏はこの作品について「出来過ぎ」との意見が出ることは十分に承知していたはずである。その上で彼が描きたかったのはロール・プレイの役割を演じることによって炙り出される登場人物たちの細かな心理描写だったのではないか、と考えた。そう思えば合点がいく。ブログを拝見していても役者一人一人の役作りへの真摯な姿勢が窺える。特に市川玲子役の関根信一さんは印象的だ。彼の醸し出す穏やかで内に秘めた力強さを感じさせる演技は芝居全体を柔らかく包んで緊張感のある舞台を引き締めている。いずれにしてもLIFTという極小空間、ロール・プレ・メソッドという設定に縛られながら、最後まで緩むことのない緊迫感を持続させ、観劇後も観客にこれだけ考えさせてくれる芝居を創り出してくれた柳井氏始め、役者さん達、スタッフの皆さんに感謝したいと思う。

    0

    2013/02/27 16:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大