国語の時間 公演情報 風琴工房「国語の時間」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    悲しき国語
    面白い。

    ネタバレBOX

    日本統治時代の京城(ソウル)。創氏改名や朝鮮語の禁止という時代。とある学校に朝鮮人教師実習生がくる…。

    甲斐壮一郎(加藤虎ノ介)…日本人。総督府の役人。実は朝鮮人で日野の子(日本で言うエタ)。朝鮮語の読み書きができない。
    柳京子(中村ゆり)…教師。母が病気でカネを稼ぐ必要性からか校長の妾になる。日本への同化政策に熱心。日本の敗戦でも笑顔はなかった。
    根岸(栗原茂)…副校長。たまに訛る。落書き事件をもみ消そうとした。
    張本(佐藤拓之)…共産党員。官憲に捕まり投獄されるも、党員をやめる。
    千代田(斉藤悠)…同化政策に賛同し、日本人として認められたとして、戦地へ行けることを喜ぶ。
    木之下(酒巻誉洋)…副校長へパナソニック製ラジオを贈る。共産主義者。
    哲(大政凛)…日本語が達者な生徒。日本語に不自由な父を煙たがる。落書きの犯人。
    伊藤(清水穂奈美)…甲斐の婚約者の女中。甲斐が朝鮮人であることを知ってた。
    金村(仗桐安)…生徒の親で警察官。張本を追いかける。
    日野(峯岸のり子)…生き別れた息子へ手紙を送るため日本語を学ぶ。昔は男に会うため夜な夜な息子を置いて遊びに出ていた。
    丸尾仁(松田洋治)…哲の父。汲み取り業務につくエタ。哲の卒業に対して黒板に日本語でおめでとうを贈る。

    同化政策に困惑したり反発したりする朝鮮人の群像劇。
    甲斐は家庭のゴタゴタというバックグラウンドをもち、「朝鮮語」に対してコンプレックスを燃やす。手紙を読んだ日野に当時の想いをぶつける甲斐だったが、甲斐のしゃべりが早くて聞き取れなかったという日野に失望する。言葉が通じず、心も通じないその不幸が舞台に充満する。
    柳は病気で精神的にも病んでいる母の負担を抱えて、同化政策に同調し校長(日本人?)の妾になる道を選ぶ。というか選ばざるを得なかった。そして、日本が戦争に敗ける。「解放」を喜ぶ朝鮮人らを尻目に呆然とする柳。身もココロも削ってきた人生が一気に無意味になった不幸が悲痛でならない。

    甲斐は朝鮮の名を消そうとし、柳は朝鮮の血を消そうとする。その二人の不幸がビシビシ伝わってくる秀作だった。
    二人に共通するのは貧困か。カネがあったら二人の人生はどうなっていたろうか。同化政策(朝鮮支配)という表面の事象の裏にある、普遍的な不幸を静かに提示してくれた。

    舞台の質感や照明の具合や小道具など、出来の良さが出演者の演技を引き立てる。特に、ラスト、柳が独り教室にいて石を投げ込まれるシーンの窓ガラスが割れる映像はとても上手かった。ここのシーンの中村ゆりはとても美しかった。

    声が若干聞き取りにくい。また、サイド席は人物が被ったりして観にくいと感じることが度々あった。演者が近くていいけど、いい場面でそれだとストレスになる。

    0

    2013/02/24 20:53

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大