満足度★★★★
上手い
飛び石を配し、上がり框には靴脱ぎ石を据えて風格を表した遊郭。無論、体裁は旅館である。男と女を描くのに、何も現代の高級マンションの一室を選ぶ必要など更々ない。ヒトの歴史始まって以来の古くて新しい関係なのだから。寧ろ、ここで用いられたような風情のある遊郭の方が遥かに相応しかろう。開演直前の音響も効いている。照明も見事だ。更に劇中、玖美子が白熱球から赤い照明に変える辺りも、気の利いた遊女の客あしらいの巧みが現れ、良いシーンだ。他にも上手い、と思わせる個所が何か所もあった。
頭でっかちになり過ぎずに、頭でっかちの失敗や滑稽を余韻として残す手法も見事である。何より、男と女の間にある存在の位相を通して、我らヒトの持つ原存在の闇を浮かび上がらせることに成功している。この為、終演後、観客の心に深く残る余韻を残した。